いのちを繋ぐ、いのちを守る
南の海からの小さな訪問者
子どもの頃に川で遊んだ経験があるなら、きっと小さなエビを見た覚えがあることでしょう。実はそのエビ、はるばる沖縄からやって来ていたのかもしれません。
最近の研究で、関東各地の河川に生息するエビは、もともと沖縄原産の種であることが明らかにされました。しかも、その一部は関東の気候では繁殖すらできないのです。つまり毎年海流に乗って新しい個体が運ばれてきているということです。さらに驚くべきことには、その南の海原産のエビが、河口からずっと離れた山奥の谷川にまで入り込んでいるのです。
一体、どのようにして沖縄から関東の山奥までたどり着いたのでしょうか。そのプロセスは、いまだに謎に包まれたままです。
自然と人間の共生をめざして
このように、自然の生態系は常に変化を続けています。このエビの場合は、本来その生態系に存在しなかった種が増えた例ですが、反対に、以前、北海道でたくさん獲れたニシンのように、人間が乱獲したり、環境が悪化したりしたため、その地域の漁獲高が激減してしまう場合もあります。
さらに進んで種の絶滅にまで至ってしまうと、食物連鎖のバランスが崩れて生態系に大きなダメージを与えかねません。しかし、逆に、その地域の生態系の仕組みをきちんと掌握していれば、乱獲や乱開発によって取り返しのつかない事態に陥る心配はないのです。
むろん、バクテリアから人間に至るまで、無数の生物が活動を繰り広げる自然界のシステムは、単純なモデルで理解できるほど簡単ではありません。しかし、一つひとつの生物集団を調査・確認することが、自然と人間が共生するための道しるべになってくれるに違いありません。
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