いのちを繋ぐ、いのちを守る

いのちを繋ぐ、いのちを守る

南の海からの小さな訪問者

子どもの頃に川で遊んだ経験があるなら、きっと小さなエビを見た覚えがあることでしょう。実はそのエビ、はるばる沖縄からやって来ていたのかもしれません。
最近の研究で、関東各地の河川に生息するエビは、もともと沖縄原産の種であることが明らかにされました。しかも、その一部は関東の気候では繁殖すらできないのです。つまり毎年海流に乗って新しい個体が運ばれてきているということです。さらに驚くべきことには、その南の海原産のエビが、河口からずっと離れた山奥の谷川にまで入り込んでいるのです。
一体、どのようにして沖縄から関東の山奥までたどり着いたのでしょうか。そのプロセスは、いまだに謎に包まれたままです。

自然と人間の共生をめざして

このように、自然の生態系は常に変化を続けています。このエビの場合は、本来その生態系に存在しなかった種が増えた例ですが、反対に、以前、北海道でたくさん獲れたニシンのように、人間が乱獲したり、環境が悪化したりしたため、その地域の漁獲高が激減してしまう場合もあります。
さらに進んで種の絶滅にまで至ってしまうと、食物連鎖のバランスが崩れて生態系に大きなダメージを与えかねません。しかし、逆に、その地域の生態系の仕組みをきちんと掌握していれば、乱獲や乱開発によって取り返しのつかない事態に陥る心配はないのです。
むろん、バクテリアから人間に至るまで、無数の生物が活動を繰り広げる自然界のシステムは、単純なモデルで理解できるほど簡単ではありません。しかし、一つひとつの生物集団を調査・確認することが、自然と人間が共生するための道しるべになってくれるに違いありません。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋生物資源学科 教授 横田 賢史 先生

東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋生物資源学科 教授 横田 賢史 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

先生が目指すSDGs

メッセージ

集団生物学では、集団の特徴を的確に把握して多様な海洋生物の管理、保全を考察していく学問分野です。生物資源の持続的な利用と生物多様性の維持・修復をめざします。具体的な研究テーマは、海洋生物の成長・繁殖、年齢組成、遺伝子レベルでみた集団間の違い、種間関係、伝染病の流行、外来生物や環境変動の影響評価などです。集団遺伝学や生態学と関連する研究内容が多く含まれています。

東京海洋大学に関心を持ったあなたは

東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。