生命現象の神秘を解き明かす人工生体膜の開発
膜があるから細胞は成り立っている
生き物はすべて、細胞からできています。その細胞の外と中を分けているのが細胞膜で、生体膜の代表です。細胞の中にはいろいろな生体膜がたくさんあります。エネルギーを作るミトコンドリアは、膜を何重にも折り重ねた構造になっています。DNAが収められている核にも膜があります。細胞とは膜がぎっしり詰まった構造とも言えるのです。
生体膜は脂質が二重構造になっていて、水になじみやすい部分となじみにくい部分があります。さらにいろいろなタンパク質が膜にくっつくことで機能を果たしています。
さまざまな機能を果たしている生体膜
生体膜が果たしている機能は、情報伝達やエネルギー変換などです。生命体が生きていく上で必要な役割を、生体膜は担っています。例えば、細胞膜は細胞の外と中のイオンや分子の濃度調整を行います。外と内側のイオン濃度を変えることで、細胞間の情報伝達を行うのです。またイオン濃度のコントロールは、エネルギー生成にも使われます。水分子(H₂O)は、H(+)とOH(ー)に分けられます。ミトコンドリアは、このH(+)の濃度を膜で調節することで、外と内側の濃度差を利用してエネルギーを作り出出しています。
人工的な生体膜が研究を進める
生命現象を解明するためには、生体膜の研究が欠かせません。ところが生きている細胞から生体膜を取りだしても、すぐに壊れてしまいます。そこで人工生体膜の開発が進められています。
生体膜は脂質の二重構造にタンパク質がくっつくことで、特定の機能を果たしています。これをシリコンやガラスなどの固体基板の上に再現するのは非常に難しいのです。しかも生体膜の種類はほとんど無数と言っていいほど多種多様にあります。そこで、まず構成要素を限定し、特定のタンパク質をくっつけた膜がどのような機能を果たすのかなど、シンプルな人工膜を作ることから研究が進められています。
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