アリの知能を徹底調査! 柔らかいコンピュータ・システムをめざす

アリの知能を徹底調査! 柔らかいコンピュータ・システムをめざす

群れで動くと「適応的知能」が生まれる不思議

昆虫や魚、鳥などの群れは、集団として知能的な行動をとることが知られています。その中で、社会性昆虫であるアリについて行動や知能を調べて、個々の個体の知能が集団の適応的知能にどのような影響を及ぼすのかが研究されています。

アリはさまざまな情報を利用している

アリ同士がフェロモンの匂いでコミュニケーションをとることはよく知られていますが、それ以外にもさまざまな感覚器官からの情報で周囲の状況を判断していると考えられます。そこで次のような実験が行われました。
通常アリの行列は巣とえさのあいだを一本道で往復しますが、あえて往路と復路を分けて2本道にし、そこに仲間のアリを直角に交わるように進入させます。するとアリは行列に合流しますが、常に列の流れに逆らう方向へ進んでいくことがわかりました。これは流れに沿うよりも逆らう方が仲間の動きが把握しやすいためで、アリが視覚的な情報も元に行動していることの表れだと考えられます。
では、その視覚情報を使ってどう周囲の目印を学習するのかについても実験が行われました。VRのスクリーンに囲まれた球体のトレッドミル装置の上をアリに歩かせて、目印となる図形を常にアリの目の前に表示したあとでシロップを与えたところ、アリは図形とシロップとの関連を学習しませんでした。この結果から、アリの目印学習には視覚だけでなく、自分と目印との相対的な位置といった動作情報が影響していると考えられます。

「柔らかいコンピュータ」から意識の謎まで

群れをなす生き物たちの、集団として知能的な振る舞いを模倣したモデルは「群知能」と呼ばれます。アリが複数の情報をどのように統合しているか、またそれがどのように群れの高度な知能を形成しているのかがわかれば、多数の入力から適切な一つの応答を導き出せる「柔らかいコンピュータ・システム」に応用できると期待されます。そしてさらに、個々のアリをニューロンに見立てて、意識の謎にもアプローチしていくことが目標とされています。

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創価大学 理工学部 情報システム工学科 准教授 﨑山 朋子 先生

創価大学 理工学部 情報システム工学科 准教授 﨑山 朋子 先生

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動物行動学、群知能

メッセージ

私は高校からずっと理系なのですが、文学や哲学、歴史なども大好きで、今もいろいろなジャンルの本を読んでいます。最近の学生は、自分がやりたいと決めたこと以外には関心をもたない人が多いのですが、あまり早いうちに道を狭めてしまわずに、あえてほかの分野にも目を向けてほしいです。視野を広げておくと、最初に決めたことをやるにしても多角的な見方ができますし、もっと面白いことが見つかるかもしれません。もちろん、まだ進路が決まっていないとしても、いろいろなことに関心をもってください。

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創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、62カ国・地域、225大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。