結核菌の戦術を探れ! 病原体vs免疫メカニズムの研究

結核は古くて新しい感染症
結核は、結核菌による感染症で、紀元前数千年前から存在していたといわれています。1882年に結核菌が発見されてから、1921年にはBCGワクチンが、1943年には治療薬が発明されて、予防・治療ができる病気になりました。しかし、世界では今も年間1千万人が新たに結核を発病し、100万人以上が亡くなっています。日本でも毎年、新たに結核にかかる人が約1万人、結核で命を落とす人が1500人以上にのぼります。
つまり、結核は今もなお世界的に重大な感染症なのです。加えて、今ある薬が効きにくくなるなどの薬剤耐性菌の問題もあることから、新たな治療薬の開発が望まれています。
免疫の攻撃をかわして寄生する
有害な細菌やウイルスが体に入ってきたとき、免疫細胞がアクションを起こすことを「免疫応答」といいます。病原体が免疫の攻撃をかわして体の中で増えてしまうと、感染症になります。この病原体と免疫の戦いのメカニズムについては、わからないことがまだたくさんあります。
結核菌が「自然免疫」を担当する細胞の一つである好中球に貪食(どんしょく:病原体を取り込み分解する働き)されるときに、殺菌を免れて細胞内に寄生・増殖する仕組みの一部が細胞の分子レベルで明らかになりました。免疫応答や感染の仕組みの解明は、新薬の開発につながります。最近では、結核菌を認識する「抗体」の働きに着目した研究が進んでいます。
体は菌と共生している?
乳酸菌は「健康に役立つ」「体にいい」として知られています。乳酸菌入りのヨーグルトなどをあなたも食べたことがあるかもしれません。ただ、乳酸菌のほとんどは「結果的に」腸内環境を整えることはわかっているものの、なぜそうなるのかはよくわかっていません。そこで、乳酸菌などの腸内の微生物が自然免疫を担当する細胞とどのように調和・共生しているのかを明らかにする研究も進められています。
細菌やウイルスと自然免疫との関係を知ることは、新たな感染症、パンデミックに備える上でとても大切です。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
