人が自然を「つくる」とはどういうことなのか?
人工林が貴重なフィールド実験場に
実は、街をつくる際に削られた土砂が日本国内だけで毎年約3億トンも出ています。その内の半分は地面をならすのに使われ、残りの半分は埋め立てに使われます。例えば東京では東京湾に持っていき、その際にゴミも混ぜてゴミ処理も一緒に行ってきました。地盤がゆるいため、かつて埋立地には倉庫としての利用がほとんどでしたが、30年ほど前から人工林が設けられるようになりました。土は千年単位の長い時間をかけてできてきますが、ここでは埋め立てた時をスタートとして土における変化を森林化に合わせて観察できる格好の実験場になっており、調査が進められています。
土を調べて初めてわかる自然との大きな違い
調査により、意外な事実が判明しました。降水量が多い日本では、浸透する水によって塩基類が洗い流されるため土は酸性を示します。しかし、東京湾内の人工林ではコンクリートやアスファルトなど、石灰を含むがれきが土壌に混じっているためにアルカリ性を示し、カルシウムが土の保持容量以上に存在する場所もありました。この特異な土壌環境において、日本で一般的に見られる木を植えて人工林にしているため、植生が土壌環境に合わないのかもしれません。また埋め立てる際に重機で地面を押し固めているので、植物の根は下に伸びず、曲がって横に広がってしまっています。植物にとっては、化学的にも物理的にも極めて異常な環境になっていました。
人が生態系を育める日は来るのか
作物の生産や管理に関しては、有史以前から知識が伝承され続けていますが、作物以外の植物と生育環境に関してはまだまだ研究途上であり、ましてや人工的に作った環境と生物の関係に関する研究は始まったばかりです。人間のライフサイクルである数十年単位で観察して森になれば「良い結果」ととらえられるかもしれませんが、人工林の実態は地球の育む自然とは全く異なる環境です。自然はどのような答えを返してくるのか、土壌学を含む自然科学の見地から今後も観察と研究を続けることが大切です。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 地理環境学科 准教授 川東 正幸 先生
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