人間の動きと特性を理解し、誰もが使いやすい製品を創る

人間の動きを科学する
バイオメカニクスとは、人間の運動や動作を力学的に分析し、「歩く」「走る」「物を持ち上げる」といった日常の動作を科学的に解明する学問です。モーションキャプチャや筋電図計測装置を活用した測定データから、人間の身体的特徴や動作の特性を明らかにします。
人間の身体能力は、年齢や障害の有無によって大きな違いがあります。高齢者は筋力や関節の柔軟性が低下しているため、若い人には簡単でも高齢者には困難な動作が多く存在しています。こうした身体特性の違いを定量的に把握することこそ、より良い製品設計への第一歩と言えるでしょう。
誰もが使いやすいデザインへ
ユニバーサルデザイン(UD)とは、年齢、性別、障害の有無にかかわらず、多くの人が利用できるデザインの考え方です。バイオメカニクス研究のデータを活用して、誰もが使いやすい製品や環境を創造します。研究では若い人と高齢者を比べることで、製品の使いやすさを評価する実験・解析を行います。その結果から、握りやすいハンドルの形状や読みやすい文字サイズ、使いやすいボタン配置などを導き出します。例えば、足の可動域データからは「若い人、高齢者、障害者を問わず利用可能な運動支援装置の開発」が可能になります。
工学的アプローチによる社会貢献
バイオメカニクスとUDの知識を組み合わせることで、社会課題の解決への貢献が期待できます。例えば、高齢化した社会での効率的な手術治療支援や、自立支援機器の開発、障害者スポーツ用具の性能向上などが挙げられます。最近では、3Dプリンタを活用して、個人の身体特性に合わせたカスタムメイドの補助具を低コストで製作する研究も進んでいます。工学的アプローチで人間を理解して、その知見を製品に反映させることで、誰もが自分らしく生活できる社会の実現につながります。バイオメカニクスとUDの研究は、工学の力で人々の笑顔を増やし、より良い未来を創造できる魅力的な分野なのです。
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