「使いやすい」とはどういうことか
スイッチひとつにも人間工学
人間がものを取り扱うときには、ものの重さや使うときの動作に応じて肉体的な負担がかかります。その負担を分析し、改善していくのが、「人間工学」という学問の大きな目的のひとつです。家電製品やパソコンのスイッチひとつをとっても、人間工学の考え方が取り入れられています。パソコンのキーボードは素早く打てるようになるべく軽く、でもある程度の押し応えがあるようにできていますし、電源ボタンは間違えて押さないように少し重く、ぐっと力を入れて押すようにできています。肉体的負担の軽さだけではなく、使うときの便利さや快適性、安全性までをも含めて、その商品の「使いやすさ」は決まるのです。
「使いやすさ」の分析
その「使いやすさ」を追究していくためには、ある動作をするときに、人間はどの筋肉とどの筋肉をどのように使うのかということについて、たくさんの人のデータをとらなければなりません。これは、体に電極を付けて、実際に作業をしたときの筋電図を見て、分析していきます。しかし、性別や年齢によって、筋力は大きく違いますし、同じものを扱う動作でも、人によってのクセなど、個人差もかなりあります。人体の構造を研究する医学の分野、そして認知科学や心理学といった分野までをも取り入れて、「使いやすさ」を理論化していくのが、人間工学の課題です。
タッチパネルの変化
例えば、駅の自動券売機や銀行のATMなどにはタッチパネルが使われていますが、パネルの中のボタンの配置やパネル自体の角度なども、時代により変化しています。真上から操作する場合はボタン部分が手の陰になって見えにくいことがあることから、パネルには少し角度をつけて斜めにするなど、不特定多数の人が使いやすいように改良が重ねられてきました。その裏には、地道な人間工学の研究成果があるのです。
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