世界が「高齢化」する中で、日本が果たすべき役割と課題
日本は高齢者福祉の先進国
日本はこれまで、福祉国家と呼ばれる国々から学び、社会保障の仕組みを整えてきました。しかし、現在の日本のように、「介護保険」制度によって一人ひとりの要介護者にケアマネジャーがつく国はどこにもありません。介護保険は日本が世界に類を見ない超高齢社会だからこそ生まれた制度なのです。今では、高齢者福祉の「先進国」である日本から学ぼうという姿勢が各国にあり、例えば認知症の人への介護方法を自国の福祉に生かしているケースがあります。
高齢者福祉は東アジア共通の課題
特に日本の高齢者福祉に興味を抱いているのが東アジアの国々です。韓国の少子化は日本以上に深刻であり、中国は一人っ子政策の帰結として、夫婦2人でその両親4人の高齢者の面倒をみるという現実に直面しています。両国は年金制度などもまだ成熟しているとは言えず、何とか踏みとどまれているのはかつての日本のように家族が支えているからです。しかし、いずれ日本と同様に支えきれなくなるときが来るでしょう。既に韓国では日本の介護保険を手本にした制度をつくりましたが、両国の介護問題がクローズアップされる日も近いと言えます。
日本に外国人介護福祉士は根付くのか?
世界各国で共通しているのは、介護の現場を支える力となっているのが外国人介護福祉士だということです。福祉国家のスウェーデンでさえ、介護福祉士の大半は移民や短期就労者です。日本もEPA(経済連携協定)の一環としてインドネシアやフィリピンといった国から介護福祉士の希望者を受け入れ、さらに枠を広げようとしています。しかし、いまだに日本語の習得や給与・待遇面での改善などが課題となっています。
こうした問題は現場任せなところがあり、外国人介護福祉士の教育が介護施設の新たな負担にもなっているのです。また、外国人介護福祉士がいかに日本の社会に根付き、一人の人間として楽しみながら生活していけるかも、多文化共生における今後のテーマとなってくるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 人文社会学部 人間社会学科 社会福祉学教室 教授 和気 純子 先生
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