世界をつなぐスポーツの力~スポーツを通じた社会開発とは
経済発展だけではひずみが生まれる
開発途上国の多くは、貧困、紛争、医療、教育など、さまざまな社会的課題を抱えています。それらの国に対する支援は、経済的な開発援助だけでは十分とは言えません。問題は複雑に絡み合っており、経済を発展させることが、かえって貧富の差を生むこともあります。そこでこのような社会のひずみを解決して社会発展を促そうという、「社会開発」の取り組みが活発になってきています。
スポーツがきっかけになる
日本に住む私たちの想像以上に、途上国の人々は社会参加のチャンスが限られています。自分の生まれた村から一歩も外へ出ずに一生を過ごす人も少なくありません。特に貧困層や女性、少数民族など社会的弱者とされる人たちにとっては、社会と関わりたくても情報や交通手段がない、教育が受けられない、周囲が許さないなどの事情から社会参加が容易ではないのです。
そのような人々が社会に参加する第一歩として、スポーツを用いた社会開発が行われています。例えばサッカーなら、場所さえあれば大掛かりな設備がなくてもボール1つで楽しめます。スポーツをすることは心身の健康につながり、練習を通じて他者とのコミュニケーションも図れます。さらに他チームと試合をしたり、その試合を地域の人々が見にでかけたりしてコミュニケーションの輪が広がれば、社会との関わりも自ずと広がっていくのです。
貧困や紛争地域でスポーツにできること
民族紛争が激しく巻き起こっていたボスニアでは、次のようなことがありました。敵だった民族とサッカーの試合を何度もするうちに相手チームとの距離が縮まり、やがて選手が足りないときはチーム間で選手の貸し借りを行い、練習も一緒にするなど、お互いを少しずつ理解するきっかけになったのです。
スポーツは、途上国の課題を直接解決することはできません。しかし社会参加の機会や、問題を解決するための糸口になります。そこから先は、生活の改善や地域・国の幸せのために、集まった人々が声を上げることが重要になるのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 人間科学部 教育学科目 生涯教育学分野 教授 岡田 千あき 先生
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