タワーマンションを支える高強度コンクリート

タワーマンションを支える高強度コンクリート

タワーマンションの課題

1990年以降、日本ではいわゆるタワーマンションの建設が活発化しました。高層の事務所ビルでは、柱と柱の間を広く取りやすい鉄骨造が多く用いられますが、高層マンションの場合は、風などでの揺れの少ない鉄筋コンクリート造で作るのが主流です。しかし、鉄筋コンクリート造は鉄骨造に比べて重くなるため、下の階には上の重さに耐えるだけの太い柱が必要になり、居室空間を圧迫するという問題が起こります。

コンクリートを強くする

そのため、柱が細くても耐えられる高強度のコンクリートが求められます。コンクリートは、凝固する性質のあるセメントに、石や砂、セメントと反応する水を加えて作られます。これらの材料バランスを設計するときに、セメントを多くして水を少なくすることで、より強いコンクリートを作ることができます。これは、お蕎麦の麺を作る職人さんが、水を少なめにしてコシのある麺を作るのと同じです。水の中に存在する粉の数を増やし、粉と粉の隙間を少なくすることで、強いコンクリートや麺を作ります。また、もっと強いコンクリートを作る場合には、セメントをたくさん使って隙間を減らすだけでなく、セメントとセメントの隙間を、セメントよりも細かい粒子で埋めるように設計します。ここでは、シリカフュームと呼ばれるような、工場が排出する煙の中を浮遊しているような超微粒子を活用した技術が使われます。

環境への貢献

タワーマンションで高強度コンクリートを使用するメリットは居住性向上だけではありません。コンクリートで使用するセメントは製造時に多量のCO₂を排出してしまうので、建物で使用するセメントの量を抑制する取り組みが進んでいます。実際のタワーマンションで試算したところ、通常の5倍の強さのコンクリートを使用した柱の面積は、通常のコンクリートの約1/4となり、使用するコンクリートの総量が減るとともに、セメント起因のCO₂排出量も抑制できることがわかっています。高強度コンクリートの利用は環境問題の解決にも役立つのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京工芸大学 工学部  教授(学部長) 陣内 浩 先生

東京工芸大学 工学部 教授(学部長) 陣内 浩 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

建築学 建築材料、コンクリート

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の幼少期は、ちょうど超高層ビルが建ち始めた時代でした。見たこともない高い建物が建つのを眺めて、いつか高層ビルを建てる仕事をしたいと思っていました。どんな職種があるとか、どうやって関わるといった詳しいことは考えずに建築学科に入学して、最初の就職先である総合建設業(ゼネコン)で材料の開発に携わり、自分の開発したコンクリートを使った高層ビルが実際に建ちました。進路を決めるきっかけは、そういう夢のようなもので十分ではないでしょうか。それを入り口にすれば、きっと何らかの形で夢は実現できるはずです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京工芸大学に関心を持ったあなたは

東京工芸大学は 1923(大正 12)年に創設された「小西寫眞(写真)専門学校」を前身とし、創設当初から「テクノロジーとアートを融合した無限大の可能性」を追究してきました。
工学部と芸術学部の 2 学部を有し、工学部は 1 年次に写真とデザインを学ぶことで芸術的なセンスを身につけ、芸術学部はメディアアートを通して工学的な技術を身につけるという、一見相反する両分野を融合させた教育を実践しています。