手術をせずにさまざまなケガを治す「柔道整復術」とは?
人間の自然治癒能力を生かす治療法
古来、柔道の世界では、相手を打倒する「殺法」と、ケガを治すための「活法」という2つの技術が伝えられてきました。このうち、活法が発展したものが、現在「柔道整復術」と呼ばれているものです。捻挫(ねんざ)や脱臼(だっきゅう)、骨折などのケガに対して、手術を行わずに人間の自然治癒能力を生かす「非観血的療法」によって治療する方法として注目されています。この施術を行える「柔道整復師」になるには、国家資格の取得が必要になります。
捻挫した足首を、あえて動かして治す?
例えば、スポーツをしているときにうっかり足首を捻挫してしまったら、痛めた足首を動かさないように固定して、腫れを防ぐために冷やしたり、圧迫したり、足を心臓より高く上げておくなどといった応急処置を施すのが一般的です。しかし、その現場に柔道整復師がいて、捻挫の程度が軽いと判断した場合は、一定のルールに基づいて捻挫した足首を正しく動かすことで、痛みと腫れをある程度除去し、回復を早めることが可能になります。これは迷信的な理由などによるものではなく、医学的にも検証されている治療法です。ただし、柔道整復術の知識と経験がじゅうぶんでない人がこうした治療を試みると、かえって症状が悪化してしまう危険性が高いため、必ず柔道整復師の判断を仰ぐ必要があります。
テクニックを定量化するための研究の必要性
柔道整復術はケガをしたときだけでなく、日頃から施術によって正しい関節の動きをなじませることで、身体の動きのバランスを高め、スポーツのパフォーマンスを向上させる効果も持っています。また、スポーツの分野だけでなく、ひざなどの関節に問題のある高齢者の治療やリハビリなどにも役立てられています。柔道整復師の資格を持っている人でも、テクニックには人によって差があるため、それらを検証して定量化し、より幅広い分野で柔道整復術を有効に活用していくための研究が進められています。
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