講義No.09970 医療技術

においをかぐだけで痛みが和らぐ~柔道整復と心理の意外な結びつき~

においをかぐだけで痛みが和らぐ~柔道整復と心理の意外な結びつき~

治りやすい環境を整える柔道整復

柔道整復は、柔道の前身である柔術の道場で行われていた活法(かっぽう)、すなわち柔術の稽古中に痛めた仲間の骨や関節などを治す技術が起源となっています。例えば、腕を骨折した患者さんなら、腕の骨をつなぎ、固定をして安静を保ち、包帯で動きを制限し、ケガの程度や状態に合わせて適切な処置を行います。さらに患者さんの治癒力を最大限に発揮できるよう、冷やしたり温めたりさまざまな手法を行って治りやすい環境を整えるのが柔道整復の技術の一つです。

においをかぐだけで痛みが和らぐ?

梅干しを見ただけで口の中に唾液がたまるように、人間は同じ経験を繰り返し行うと、想像しただけで体が反応するようになります。ある時、接骨院の待合室で、そのシップ薬のような独特のにおいをかいだだけで痛みが和らいだという事例があります。これは接骨院のにおいをかぎながら治療を受けて痛みが和らいだという体の反応が繰り返された結果の心理的な反応であり、これを「条件づけ」と言います。スポーツで例えれば、毎回20km地点で膝が痛くなってしまうマラソン選手がいるとします。競技中の治療行為は棄権となってしまいます。もし普段、接骨院に通いながら独特のにおいの中での治療効果を「条件づけ」されていれば、20km地点でそのにおいをかいだだけで治療効果が発揮され膝の痛みが和らぐ可能性があるわけです。

心理状態を整えてケガを治療する

東洋医学では「病は気から」という言葉があるように、古くから「気」は健康と強く結びついていると言われています。人間の体には「血液、リンパ、気」が流れていると考えられ、「気」が滞ると体に不具合が生じると言われます。「元気、病気、強気、弱気」など、人間の身体・心理状態を表す言葉には「気」が含まれます。柔道整復は、「どうしても治したい」という患者さんの強い気持ちを引き出せるかどうかで、ケガの治り方に大きく影響が出ます。柔道整復師は患者さんの「気」もコントロールする仕事なのです。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 医療技術学部 柔道整復学科 教授 櫻井 庄二 先生

帝京大学 医療技術学部 柔道整復学科 教授 櫻井 庄二 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

柔道整復学

メッセージ

ケガをした人や体に不具合のある人に対して、慈悲の心を持てる人、そして家族への思いやりはもちろん、他人のことでも自分のことのように感じられる優しい心を持ってほしいと思います。そうした心を持ち、人との関わりを大切に思い、人のために尽くして感謝される仕事を求めているなら「柔道整復師」をめざしてみませんか。私たちと共に人体の構造や機能について学び、ケガや体の不自由な人を救い、スポーツにいち早く復帰させ最高のパフォーマンスを発揮できるようサポートしたいと思う気持ちがあればぜひ大学の門をたたいてほしいです。

先生への質問

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帝京大学に関心を持ったあなたは

帝京大学 宇都宮キャンパスは栃木県宇都宮市の北西部の高台にあるキャンパスで、理工学部の4学科(機械・精密システム工学科、航空宇宙工学科、情報電子工学科、バイオサイエンス学科)をはじめとして、医療技術学部柔道整復学科、経済学部地域経済学科が開設され現在は文系・医療系・理工系を擁するミニ総合キャンパスとなっております。それぞれの学問領域で交流を図りながら各分野のスペシャリストとして、将来、さまざまな分野の核として、地域に貢献できる人材を育成します。