ストレスと痛みの関係を探る! 痛みを減らす柔道整復の実現へ

ストレスと痛みの関係を探る! 痛みを減らす柔道整復の実現へ

痛みの謎を解く

柔道整復師は、痛みを持つ患者に日々接していています。しかし痛みには謎が多く、なぜ痛みが起こるのかなど、研究が必要なテーマが山積みです。痛みのメカニズムの研究事例の一つが、ストレスによって引き起こされる筋肉の痛みに関する研究です。持続する過剰な筋緊張によって伝達される感覚神経の異常興奮によって、脊髄内の免疫細胞であるミクログリアが暴れて炎症を起こしている可能性が出てきました。

ストレスとミクログリアの関係

ミクログリアは普段、脊髄内をパトロールして悪者がいたり、異常な細胞がいれば保護したりやっつけたりするという、健康を保つために必要な免疫細胞ですが、ときには痛みの原因にもなる可能性があります。ストレスとの相関関係を証明するために、ミクログリアだけを特殊な薬で死滅させて観察が行われました。その結果ストレスを感じた動物は、ミクログリアを死滅させたことによって筋肉に痛みを感じるものの、その程度は弱くなっていました。つまりミクログリアはストレスによる痛みを増幅していたのです。

痛みを伝える神経はどこ?

ミクログリアが暴れるきっかけとなるストレスが、どう脊髄まで伝わるのかも研究されました。体内には候補となる神経経路がいくつもあるため、どの神経が関係しているのかを特定する必要があります。手がかりはミトコンドリアです。神経が何らかの障害を受けると、ミトコンドリアが緑色に光るように遺伝子改変させた特殊なマウスを用いました。つまりストレスを受けたときミトコンドリアが緑色に光る神経を探せば、異常に興奮している神経の場所がわかります。実験の結果、ストレスを受けたマウスは身体の動きやバランスなどを把握する筋肉にある「筋紡錘」というセンサーから伝える神経経路「固有感覚ニューロン」が過剰に興奮して、脊髄内のミクログリアを活性化させて痛みを増幅させることが明らかになりました。このように解明されたメカニズムをもとに、患者が感じている痛みを少しでも減らせる方法を見つけ出そうと研究が続いています。

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常葉大学 健康プロデュース学部 健康柔道整復学科 准教授 安井 正佐也 先生

常葉大学 健康プロデュース学部 健康柔道整復学科 准教授 安井 正佐也 先生

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解剖学、疼痛学、組織学

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柔道整復は日本の伝統医療で、その考えや技術を世界に向けて輸出する活動が行われています。レントゲンがない環境で診断する方法や、手術なしでケガや痛みを治す方法など、世界に誇れる技術がたくさんあります。大学では世界中の最先端の知識を学び、医科学分野の研究ができます。これまでの古き良き伝統技術も学びながら最先端の医科学も学べる環境が大学にあります。柔道整復業界におけるトップを目指すなら、4年間かけてじっくり学ぶことをおすすめします。世界に通用する知識や技術を身につけたいなら、ぜひ一緒に勉強しましょう。

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2013年4月、常葉学園大学・浜松大学・富士常葉大学の3大学を統合し、新たに法学部[法律学科]、健康科学部[看護学科・静岡理学療法学科]を加え10学部を擁する「常葉大学」が誕生しました。3大学を統合することにより、各大学が培ってきた教育成果を融合。スケールメリットや学部・学科の多様性を生かし、教育研究活動全体の質の向上を目指します。
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