低廉なセンサを活用した、船の衝突や座礁を防ぐ海事システムとは
秋葉原で買える部品で船の安全を守る
MEMS(Micro Elector Mechanical Systems)という技術で作られた「ジャイロセンサ」や「加速度センサ」を知っていますか? 電子部品ショップでも買える低廉なセンサで、回転量や速さを計測できます。自動車の姿勢制御、携帯電話の画面の回転制御、カメラの手ブレ防止など様々なところで使われています。
このMEMSセンサを活用し、船舶の安全運航に貢献する研究が進められています。
衛星からの信号の妨害行為に対抗
船舶では位置を知る1つの方法として、「GPS(全球測位衛星システム)」というシステムが使われています。このシステムで、「ジャミング(信号をかく乱する行為)」や「スプーフィング(衛星信号になりすます行為)」により正確な位置がわからないようにする妨害が問題になっています。正確な位置測定ができないと、船舶の衝突や座礁を招いてしまいます。しかし、現在の船舶にはGPSに障害が生じた時に、自動的に位置を推定できる他のシステムが搭載されていません。MEMSセンサを使って位置推定を行える低廉なシステムを構築できれば、多くの船舶で搭載でき、安全運航の実現、ひいては人命ならびに環境の保護に貢献できます。
船舶の衝突ゾーンの見える化
その他にも、船の事故を防ぐための技術が研究されています。その1つが、「衝突ゾーンの見える化」です。AIS(船舶自動識別装置)により、全世界にいる船舶の位置や速度データなどを日本にいても取得できます。このAISによって蓄積された1~3年分の船舶ビッグデータを衝突ゾーン(2隻の船舶がある条件を満たす時に衝突する場所)という観点から解析すると、複数の船舶が行き交い混雑している海域で、衝突ゾーンが一番発生しているエリアよりも少し離れた所で過去に衝突事故が発生していることがわかってきました。そこで、このような衝突ゾーンが発生している海域を特定し、航海士に示すことにより、注意を喚起して事故が起きにくくなることが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋工学部 海事システム工学科 助教 福田 厳 先生
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