日本の食料自給率って本当に低いの? 国際経済の視点で考える
食料自給率が低い「からくり」
日本は食料自給率が低いといわれていますが、本当にそうでしょうか。一般的にいわれる食料自給率とは「カロリーベース」のことで、これは人が生きていくために必要なエネルギー量に基づいて算出されます。もうひとつ、食料の国内消費生産額に対する国内生産の割合を示す「生産額ベース」もあり、こちらでは例えばカロリーが低い野菜類や海藻類などの自給率はカロリーベースよりも高くなります。日本の食料自給率はカロリーベースで38%、生産額ベースでは63%と、かなりの差があります。
また、食料自給率の計算式では、分母は国産品から輸出分を差し引きますが、分子は国産品そのままです。つまり輸出が増えると、国内生産量が増えなくても、見た目の食料自給率は上がるのです。さらには国内の畜産農家で育てられる牛や豚などの食肉も、輸入飼料を使っていれば輸入品とみなされてしまいます。
輸入食料は悪か?
国際経済の観点から見ると、食料自給率はただ高ければいいということにはなりません。食生活の多様化が進んだ中で、自国で消費する分の食料すべてを自給するのは不可能です。グローバル化した社会において、輸入食料を単純に悪としてみなしてしまうのも不自然な考え方です。
また日本の食文化が世界にも広まり、日本の農畜産物の評価が国際的にも高まっています。足りないものを輸入し、質のよい日本産の食料を輸出して外貨を稼ぐことは、諸外国と日本の友好的な国際関係を築くことにも、日本の国力をアップすることにもつながります。
国力をあげる農業政策を!
食料自給率とは、数字を上げるための目標ではなく、国民の健康的な生活を維持するためのひとつの指標です。その数字を基に、国内生産を強化すべき食料や、国際評価の高い輸出品など、国際関係や輸出・輸入の経済的バランスなどを確認します。そして、日本の農業や畜産業が国際的な競争力を持てるような支援や、日本が豊かになるための政策を考えていくことが重要なのです。
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拓殖大学 国際学部 国際学科 教授 茂木 創 先生
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