農産物輸出で産地は活きるのか? ―世界に果物や野菜を売り込もう―

農産物輸出で産地は活きるのか? ―世界に果物や野菜を売り込もう―

世界に広がる日本の農産物

最近、欧米やアジアの国々で和食ブームが起きています。ヘルシーで素材の良さを生かす「和食」は、ユネスコ無形文化遺産に登録されており、有名です。その原料である農産物も高く評価されています。例えば青森の特産品であるリンゴは、甘みや香りが豊かでサイズが大きく、色も鮮やかなことから、海外では富裕層向けに売られています。

輸出は農家の新たな選択肢に

現在の日本の食品流通では、バイイングパワーが強いため、スーパーをはじめとする小売店が優位な立場にあります。この理由として、農家の売り先はスーパーが中心であり、それ以外の売り場が少ないことがあげられます。仮に海外への農産物の輸出が盛んになれば、農家にとって新たな売り先ができ、価格や販売方法も今よりも有利に進められる可能性が高まります。実際に、北海道のながいも農家の中には、輸出に力を入れはじめてから収入が増えた人もいます。個々の農家がビジネスのノウハウを身につけることが前提ですが、停滞する日本の農林水産業を活性化させる手段として、輸出に注目が集まっています。

農業経済学の役割

日本の食品の輸出金額は年間約9,000憶円です。政府は1兆円をめざして、農林水産物輸出のサポートに力を入れています。しかし、輸出の内訳をみると、日本酒や調味料という加工品が多く、果物や野菜は1割以下です。調味料や加工品には海外産の原料が含まれているため、産地や農家を活性化させるという点では、果物や野菜という生鮮の割合を増やすことが重要です。
こうした問題を取り扱う学問が農業経済学です。経済学の理論や知識をベースに、農学の特性を加えて幅広く研究していくものです。食料自給率が低いことをはじめ、日本の農業・農村は問題が山積みです。これからの日本の農業を考えると、農業経済学が果たすべき役割は大きいといえます。

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弘前大学 農学生命科学部 国際園芸農学科 教授 石塚 哉史 先生

弘前大学 農学生命科学部 国際園芸農学科 教授 石塚 哉史 先生

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農業経済学

先生が目指すSDGs

メッセージ

将来、食や農の分野について学びたい人でも、高校時代は関連するニュースを気に留めておくだけで十分でしょう。その中で面白いテーマがあれば、大学に入ってから存分に研究することができます。むしろ、海外に対する抵抗感を持たず、いろいろな国の文化や生活に関心を持つようにしてください。
世界には実に多様な国があり、自分の知らない世界が広がっています。それらを学ぶことは自分の可能性を広げてくれるだけでなく、逆に日本の特徴や自分が暮らす地域を知ることにもつながります。

先生への質問

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弘前大学は、人文社会科学部、教育学部、医学部、理工学部および農学生命科学部の5学部からなる総合大学で、すべての学問の基礎的領域をカバーしています。
この総合大学という特性を生かして、本学では教養教育と専門基礎教育を重視した教育を行い、これからの社会に対応できる人材を育成することを目的としています。
本学の学生は、歴史と伝統のある文化の香り高い弘前市で学びながら、地域の自治体や企業などと連携し、さまざまな活動に積極的に参加しています。