フリーターと不法移民の姿に見る、日米の未来予想図
不法移民たちの暮らしぶり
アメリカには1300万人と、東京の人口に匹敵する不法移民が住んでいます。メキシコや南米から来た彼らにはビザがないこともあり、大多数は非正規雇用者です。仕事は配管工や塗装業などの建築系や引っ越し業者などで、賃金は月額300ドル程度、仕事がない日も珍しくありません。しかし互いに助け合うコミュニティが機能しているため、何とか暮らしていけます。逆に言えばコミュニティから抜け出せず、アメリカの市民権を持った貧困層から襲われるといった危険もあるのですが、ポジティブで元気だというのが彼らの特徴です。
ネガティブになりやすい日本の文化
一方、日本の非正規雇用者というと、フリーター層が思い浮かびます。特に若年層において彼らがコミュニティを形成するのが、スケートボードやダンスといった趣味的なつながりです。アメリカの不法移民と比べると遥かに職には就きやすいのですが、長続きしないこともあり、同じようなアルバイトを転々とする傾向があります。それでも経済的にはあまり困らず、安全でもあるのですが、ネガティブな精神状態に陥りやすくもあります。これは一度、レールから外れると社会に戻りにくいという日本の文化が根底にあり、メインストリームから外れていてもなお、社会的なプレッシャーが精神的コンディションを左右しているからだと考えられます。
非正規雇用者は将来のマジョリティ
日本のフリーターとアメリカの不法移民に共通するのは社会の中でマージナル(周辺的)な立場にあるということです。そしてマージナルな集団は、20~30年先にはマジョリティ(多数派)集団となるでしょう。実際、就職せず、仮にしたとしてもすぐに辞める若年層は確実に増えています。社会の中でマージナルな存在だった非正規雇用者がマジョリティになると、価値観もそちらへとシフトします。現在はその節目の段階にあり、価値観が逆転する事態は誰もが近い将来、直面する問題となると考えられているのです。
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先生情報 / 大学情報
法政大学 キャリアデザイン学部 キャリアデザイン学科 准教授 田中 研之輔 先生
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