正規と非正規、あなたならどちらを選ぶ?
多様化する働き方
企業での働き方には、「正規雇用(正社員)」か契約社員やアルバイトといった「非正規雇用」の二通りがあります。平成の就職氷河期の時代には、正社員の採用人数が減ったためにやむなく非正規で働く人が多くみられました。近年は働く側が自発的に、勤務形態などの自由度が高い非正規雇用を選ぶケースも増えています。
非正規雇用がもたらすものは
非正規雇用が経済におよぼす影響をデータで示した研究があります。影響は主に二つあり、一つは「雇用の創出」です。正社員一人で行っていた仕事を非正規の二人で分担して進めると、一人分の雇用が創出されたことになります。一方で賃金の面では、非正規雇用は同じ仕事をしても正規雇用より賃金が安い傾向にあります。その差額が、労働市場全体で見ると「賃金の損失」となるのです。賃金の損失は企業にとってはコスト削減になるために、企業が雇用の非正規化を推し進める要因にもなっています。厚生労働省が公開するデータをもとに統計分析を行うと、雇用の非正規化による賃金損失は7千億円を超えて、前年比150億円増という結果が示されました。さらに男女別に分析すると、男性の正規・非正規間の差に対して、女性の正規・非正規間の差の方が「小さい」こともわかりました。これは男性と比べて女性の正社員の賃金が低いことを示唆しています。
働き方のメリット・デメリット
非正規雇用には転勤や残業がないなど働き方の自由度が高い一方で、賃金格差や雇用の不安定さというデメリットもあります。それらをきちんと理解した上で、自分の働き方を選ぶ必要があります。また、同じ仕事をしているのに性別や雇用形態の違いで賃金に差をつけること自体がおかしく、「同一労働・同一賃金」を実現させるべきとの議論も国を中心に活発になっています。これが実現すれば、女性や非正規雇用のモチベーションがあがり、労働市場全体の生産性アップにつながることが期待されます。そこでも大きく役立つのが、客観的なデータなのです。
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九州国際大学 現代ビジネス学部 地域経済学科 教授 小野寺 剛 先生
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