和食のグローバル化:回転寿司から見える国際関係

和食のグローバル化:回転寿司から見える国際関係

回転寿司がつくるグローバルなつながり

あなたは、普段の食生活の向こうにどのような世界が広がっているか、想像したことはありますか。
例えば、外食で大人気の回転寿司。実は、大手チェーンのネタは、世界49の国・地域から仕入れています。仕入れ方法も、できあいのモノから現地の人が加工したモノまでバラエティに富んでいます。寿司は「和食」の代表格と思いがちですが、実は世界中の資源と労働でできたグローバル商品なのです。原動力は、「いかに安く、早く、大量に提供するか」。
私たちの食生活は、地球規模のつながりによって支えられているのです。

和食のグローバル化がもたらすもの

では、回転寿司のグローバル化は、どのような影響をもたらしているのでしょうか。
産地に注目すると、乱獲や養殖による環境破壊、劣悪な労働が問題視されています。グローバルな仕入れは、気候変動を加速させています。食料自給率は3割台、水産物自給率も5割台まで下がっていますが、最近は世界的な魚食ブームで、自由な仕入れもままならない時代に入っています。
一方、国内では、大手資本の独占の影で、店内では職人の存在は不要とされ、低賃金従業員で運営されています。一方、寿司職人のお店は競争に勝てず、退場を迫られ、地域産業やコミュニティの衰退も引き起こしています。
 

グローバルな消費者からグローバル市民へ

以上のように、和食ですらグローバル化が進み、消費者メリットや企業の繁栄をもたらしていますが、同時に社会経済的・環境的な問題が国内外で生じています。しかも、日本は食料自給率が低く、世界中でネタの争奪戦が起きており、グローバル化は曲がり角にあるといえます。
このような中、「安くてうまい」選択ではなく、足下の豊かさを再発見し、人や社会、地域、環境に優しいものを選択する「エシカル消費」が注目されています。
世界中のネタを食べるグローバルな消費者をこえて、当事者として現状を把握し、日本も世界も豊かにするグローバル市民への転換が求められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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高知大学 人文社会科学部 人文社会科学科 教授(学部長) 岩佐 和幸 先生

高知大学 人文社会科学部 人文社会科学科 教授(学部長) 岩佐 和幸 先生

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アジア経済論、国際関係学、地域経済学

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メッセージ

あなたは、未来の社会の担い手です。大学では知識を得るだけでなく、得た知識を使っていかに新しい知恵を生み出して課題解決するかという学び方を学びます。こうした知能生産者になれるよう、前向きに取り組んでほしいです。高校時代は、目の前にあることの先に何があるのか、社会や世界とどうつながっているのかなどに思いを馳せ、視野を広げてみましょう。すると、今まで見えなかったことが発見できます。それが学問への第一歩です。そこから、おもしろい、やりたいと思える目標がきっと見えてくるでしょう。

先生への質問

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高知大学は、四国山地から南海トラフに至るまでの地球環境を眼下に収め「地域から世界へ、世界から地域へ」を標語に、現場主義の精神に立脚し、地域との協働を基盤とした、人と環境が調和のとれた安全・安心で持続可能な社会の構築を志向する総合大学として教育研究活動を展開しています。
教養教育、専門教育、正課外教育やインターンシップを通じ「表現力」「プレゼンテーション能力」「コミュニケーション能力」「異文化理解能力」「情報活用能力」の5つの能力で社会の力になる21世紀の知識創造社会で活躍できる人材を輩出します。