商品が届かない!? 迫る「物流」の崩壊危機に立ち向かう!

商品が届かない!? 迫る「物流」の崩壊危機に立ち向かう!

現代社会になくてはならない「物流」

現代社会は「分業」で成り立っています。そのため、モノをつくる人とモノを消費する人との間に時間的・空間的な距離が生じます。この距離を埋めるのになくてはならないものが「物流」です。そして「物流」は、モノがヒトと違って自分で移動できないため、ヒトがモノを運ぶ仕組みをきちんと作らないと成り立ちません。
今、そのモノを運ぶ仕組みのゆがみが長年蓄積されて大きくなり、日本の物流が崩壊してしまうタイムリミットが迫っているという現状があります。

なぜ物流は崩壊するのか

物流業界は他業界に比べて労働時間が長く給与総額が低いため、深刻な労働者不足に陥っています。この劣悪な労働環境には、例えばネットショップなどが「送料無料、翌日配達、再配達無料」などの配送サービスで売り上げを伸ばし、それが「当たり前」になっていることが関係しています。
また、カーボンニュートラル社会に向けて、トラック輸送から環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換するモーダルシフトの促進などが求められています。さらに都市域では、倉庫や物流センター、トラックの駐停車場などといった物流のための都市空間が足りなくなっている問題もあります。

「当たり前」をみんなで問い直す

問題の解決方法の1つに「交通需要マネジメント(TDM)」の考え方があります。これは、運ぶモノが増えた分だけトラックを増やすのではなく、地球環境、労働条件、都市空間などの制約内に収まるように、荷主、物流事業者、行政、消費者が一体となって効率的なモノを運ぶ仕組みを工夫して作ろうとするものです。そのためには、物流関連データを収集・分析し、物流を「見える化」することが必要です。また、さまざまな物流対策の効果を理論的に予測・評価するための手法の開発も求められます。さらに、関係者間の意見を調整できるコーディネーターを育成する必要があります。そして何より私たち消費者が、安さや便利さなど、これまでの「当たり前」を物流目線で問い直さなければならないのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

神戸大学 海洋政策科学部 海洋政策科学科 海洋ガバナンス領域 准教授 秋田 直也 先生

神戸大学 海洋政策科学部 海洋政策科学科 海洋ガバナンス領域 准教授 秋田 直也 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

交通工学、物流・ロジスティクス

先生が目指すSDGs

メッセージ

コンビニの棚には、いつも商品があふれています。それが「なぜなのだろう」と思えると、その背景に、複雑な物流の仕組みや人々の努力があり、それらが1つでも欠ければ、コンビニで商品を買うことができないことに気付けます。こうしたいろいろな「当たり前」に、好奇心を持って「なぜ?」と問いかけ続けられるようになってほしいです。すると、一見関係ないような事柄のつながりが見えてきて、きっと、ワクワクが増えます。遊びも含めて、いろいろなことを体験する中で、知識を得ること、勉強することの本来の面白さを発見してください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

神戸大学に関心を持ったあなたは

神戸大学は、国際都市神戸のもつ開放的な環境の中にあって、人間性・創造性・国際性・専門性を高める教育を行っています。
また、神戸大学では、人文・人間系、社会系、自然系、生命・医学系のいずれの学術分野においても世界トップレベルの学術研究を推進すると共に、世界に開かれた国際都市神戸に立地する大学として、 国際的で先端的な研究・教育の拠点になることを目指します。