現場の声を聞いて実践する、これからの国際支援のあり方
貧富の二極化が進むパラグアイの現状
南米のパラグアイは経済成長を続けています。経済成長に成功した理由として「メルコスール」という南米の貿易圏への加盟が挙げられます。メルコスールが関税を撤廃し、貿易自由化を促進したことで、人件費の安いパラグアイに海外企業の投資が進み、大きな発展を遂げました。
その半面、富裕層と貧困層の二極化が進み格差が拡大しています。都市には近代的なビルが建ち並び、巨大なショッピングモールが建設される一方、農村部はインフラの整備が不十分であり、経済的に困難な状況にある家庭が数多く存在します。スラムもあり、スラム出身者が差別されたり、仕事が満足に得られなかったりと、多くの課題が残されています。
互いに利益を得る「互恵」の関係へ
しかし、国際支援は、「恵まれないかわいそうな人たちを支援する」という思いで行うものではありません。支援する対象である貧困層や障がいのある社会的弱者の方々は、潜在的な能力が剥奪されている状況です。10人いれば10通りの才能があります。彼ら・彼女らから私たちが忘れてしまった心の豊かさや思いやりを教えられることが多々あります。それは一方的な支援ではなく「互恵」といえるでしょう。
国際支援の場では、何よりも対話が必要
実際の支援の場ではさまざまな問題にぶつかります。例えば、生活を便利にするために村と村を結ぶ川に橋を建設しようとする時、その場所にあった先住民族の人々が大切にしていたご神木を不用意に取り除いて工事を進めてしまうようなことがあります。目に見えない文化規範などに配慮しなければ、その後も地域でコンフリクトが継続するでしょう。ご神木は先住民族の人々とコミュニティにとって大切なものだからです。支援する側とされる側では、物事を見るフレームがまったく異なることがしばしばあります。その差異、すなわちフレームが異なる、ということを踏まえたうえで、異なる価値観を有する方々と対話を重ねながら、互いを尊重した関係を築くことが、これからの国際支援には求められるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
横浜国立大学 都市科学部 都市社会共生学科 教授 藤掛 洋子 先生
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