人が住まなくなった集落でも、地域らしさや人の交流は続くのか

人が住まなくなった集落でも、地域らしさや人の交流は続くのか

大切な地域らしさを守り伝える

どのような地域にも歴史や文化、独特で面白いものがあります。地域らしさや地域性とは、こうした歴史や文化から出てくるものです。地域性は大切なものですが、日本の人口は減りつつあり、地域でも人が減ることで、寺院や神社などの文化財を守ることが難しくなっているケースが見られます。人が先々に備えて、元気なうちに大切なものを引き継ぐ終活をするように、地域も残したいもの、残すべきものを守り伝えていくため、元気なうちに「地域の終活」を考える時代がきています。

人が住まなくなっても歴史や交流は続く

地域らしさを守り伝えるための参考になるのが、人が住まなくなった「離村集落」についての調査です。京都府の北端部、京丹後市にあった6つの集落では、昭和の半ば以降、豪雪など冬場の厳しい環境もあり、住民が出ていきました。そうなると地域の歴史や文化もなくなると考えがちです。ところが尾坂という集落では、住民が前もってほかの地に神社や観音像を移すなど、後悔が残らないよう準備を整えてから、集落を離れていました。しかも年1回集まり、集落に続く道の草刈りをして、そうしたことを記録簿に書き継いでいます。人が住まなくなっても、歴史や良好なコミュニケーションは生き続けているのです。

消えない村が地域のこれからのヒントに

離村集落の調査には、後日談があります。調査地域の近くに、力石(ちからいし)という別の離村集落がありますが、そこの元住民たちが尾坂の取り組みを知って触発され、5年ほど前、力石に記念碑とポストを建てたのです。ポストに入れたのは、誰もが思いを書き込めるノート。今では元住民の孫世代ら、力石に住んだことのない人もメッセージをつづるなど、いったん途絶えた村に新しいコミュニケーションが育まれつつあります。地域らしさは守れることを、こうした事例は示してくれます。広く役立てるためには、尾坂や力石の追跡調査や、さらにほかの事例を調べていく必要があります。

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福知山公立大学 地域経営学部 地域経営学科 教授 小山 元孝 先生

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地域社会学

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メッセージ

「あなたの地域には、どんな面白いものがありますか?」と聞くと、大抵「何もない」と返ってきますが、よくよく話せば祭りや食文化などたくさん出てきます。住民が身近なものの特色を自らの言葉で発信することは、地域の宝を大切にすることだと考え、私の研究ではこうした面白いものの掘り起こしにも取り組んでいます。ここでの学びは、あなたの地域に展開していくことが可能です。課題も含めたリアルな地域の姿にふれて、残したい歴史や文化をどのように受け継ぎ、活用するかを一緒に考えましょう。

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京都にある公立大学「福知山公立大学」は「持続可能な地域づくり」に挑みます。地域経営学部は、地域社会の事業体が地域社会のあらゆる資源を有効に企画・運営・管理することにより、地域社会づくりや創り直しに寄与し「持続可能な社会」の形成に貢献するための学修を行います。情報学部は、先端情報技術を地域の生活や産業のあらゆる分野に応用し、暮らしを豊かにして社会の安定に寄与する地域モデルを構築するための学修を行います。
両学部は、地域住民・団体と協働して学び、研究を深める「地域協働型教育研究」が学びの特徴です。