睡眠について知ると、受験にも有利?

睡眠について知ると、受験にも有利?

眠りは心理学の重要テーマ

心理学はそもそも生理学から枝分かれした学問で、生理学は医学と関連があります。いろいろな機器で体の客観的データを取りながら、それが心の働きとどう関係しているかを調べるのです。その代表的な分野が睡眠で、眠りは、食欲や性欲と並んで、生きるのに欠かせない欲求のうちの一つです。また、人間の心とも密接にかかわっていて、心に不調をきたすと必ず眠りが浅くなったり眠れなくなったりと、眠りの問題が発生します。ですから、眠りを入り口にして心の問題を考えることができるのです。

眠りが心の働きに影響する例

まず、眠気と香りの関係を紹介しましょう。いろいろな香りを被験者にかがせ、脳波を調べて、どの香りをかいだときに最も眠気が解消するかを調べると、実際に眠気が吹き飛ぶのはグレープフルーツの香りということがわかります。グレープフルーツの香りは、脳だけでなく体も目覚めさせ、興奮させる働きがあるのです。
また、光も眠りに大きな影響を与えます。タンカーや原子力発電所など夜勤がある職場では、どうすれば勤務時間中に職員が眠くならずにすむかが、事故を防ぐために重要です。調べてみると、2500ルクスぐらいの強い光を浴びると、眠気を感じるのが遅くなり、勤務時間中には眠くならずにすみます。ちなみに、この光の強さは戸外の明るさに匹敵します。室内の普通の明るさではこの効果は出ません。

眠ったほうが記憶力はよくなる

古くて新しい研究課題が、「眠りと記憶力の関係」です。前提として、夜に8時間ほどじゅうぶんに睡眠をとるのが一番よいのですが、それでは仮眠の場合はどうでしょうか。実験を行ってみると、深い仮眠を30分取ったほうが、取らないよりも記憶力がよくなります。この説からすると、受験のときも、休み時間に1回深く寝て試験に臨んだ方がよいということがわかります。
このように、心理学を研究することで、生活に役立てる方法が見つかるのが、心理学の面白味でもあり、醍醐味でもあるのです。

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法政大学 文学部 心理学科 教授 高橋 敏治 先生

法政大学 文学部 心理学科 教授 高橋 敏治 先生

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生理心理学

メッセージ

心理学は、マスコミなどで取り上げられる一部だけを見ると面白そうに見えるかもしれませんが、勉強をしはじめると少しつまらなく感じるかもしれません。しかし、そのつまらないと思う勉強を積み上げないと、応用分野の面白さはわかりません。基礎的な研究がどういう形で自分たちの生活にかかわっているかという視点を、いつも忘れないでください。臨床に興味を持つ人でも、統計や実験のやり方を基礎からみっちり学ばないと、臨床への応用で困ることになります。心理学の幅広い領域を学びながら、あせらずゆっくり進路を決めてください。

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