新しい材料の開発は、料理に似ている
ゼロ戦のボディは新しい材料で造られていた!
かつて日本が、スピード、航続距離などで、世界最高水準の飛行機を開発したことがありました。1939(昭和14)年初飛行の零式戦闘機、通称「ゼロ戦」です。飛行機のスピードをあげ、さらに燃費をよくするには、エンジンなどの性能もありますが、何より軽いボディが必要です。そこで軽いアルミニウムが注目されましたが、強度に問題がありました。しかし、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、クロムなどと混ぜて合金にすることで、高強度化が実現され、アルミニウム合金が新材料としてゼロ戦に使われました。このように、物理学、化学などの知識を融合して新しい材料を開発する分野を「材料工学」と呼びます。
さらに軽いマグネシウム合金
現在、アルミニウム合金は自動車や電車で使われていますが、アルミニウムよりさらに軽いマグネシウムの合金に運輸業界の期待が集まっています。車体をマグネシウム合金に置き換えることができれば燃費が約30%もよくなり、さらにマグネシウムは海中にもある豊富な資源なので、安いという魅力もあります。
しかし、問題は、延性(伸びる性質)が低いことです。機械のボディや部品の材料は、さまざまな形に加工できなければなりません。しかし、延性が低いとすぐに割れてしまうのです。そこで、マグネシウム合金の延性を高める研究が進められています。
調味料を加えたり、熱したり!?
材料の開発は料理に似ています。料理は、食材に調味料を加えたり炒めたりオーブンで熱したりします。まさに、材料開発も、元素にレアメタルを加えたり、高温にして反応を高めたりします。延性の低いマグネシウム合金板を、高温・高圧の特殊な条件で加工することにより、10%未満だった延性を、加工に必要とされる30%にまで高めることに成功しました。軽量なマグネシウム合金の実用化に、一歩近づいたといえます。
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