化学反応を利用した太陽電池の仕組みを見てみよう
世界がしのぎを削る太陽電池の開発
CO₂を出さない環境にやさしい発電方式として、太陽電池を用いた太陽光発電に期待が寄せられています。そして、いま市場に多く出回るシリコンを使った太陽電池より低コストで効率のよい、次世代の太陽電池の開発が世界中で進められていて、その一つが「色素増感(しきそぞうかん)太陽電池」です。これは1991年にスイスのグレッツェル教授が提案した方式で、シリコン太陽電池より材料が安く、製造に大掛かりな設備もいらないことが特長です。
「酸化還元」の化学反応を利用する
色素増感太陽電池は、電解液(電気を通すための液体)を作用極と対極の二つの電極ではさんだシンプルな構造をしています。よく使われる材料は、酸化チタンです。酸化チタンをガラスに焼き付け膜状にして色素を吸着させ、電極(作用極)にします。酸化チタンの膜には20ナノメートルほどの小さな孔(あな)がたくさん開いており、色素が太陽光を吸収すると、電子が放出されます。その電子が孔から作用極、回路を通って対極にたどり着き、電解液に含まれる物質を介して再び色素に戻るのです。いわゆる「酸化還元反応」を繰り返して、光エネルギーを電気エネルギーに換えているというわけです。
液体を固体に変えた新タイプを研究中
しかし色素増感太陽電池の発電効率は、まだ残念ながらシリコンのものには及びません。また電解液には液漏れや蒸発が起こるという問題もあるため、雨風や気温差にさらされる屋外に設置しても性能を維持できるかどうかが課題とされています。現在、発電効率を高める新材料の開発や、安定性や耐久性を高めるために電解液の代わりにヨウ化銅を使う固体型の色素増感太陽電池が研究されています。固体型の色素増感太陽電池は、材料の酸化チタンの孔にいったんヨウ化銅を溶かした溶液を染み込ませ、それを乾かして固体にするのですが、ムラなく均一に染み込ませるのが難しく、溶液の種類や濃度、温度を調節しながら実験が続いています。
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