スマホから海底ロボットまで 無線電力伝送で便利な社会を!
ケーブルのいらない「置くだけ充電」
「置くだけ充電」というスマートフォンの充電システムが注目されています。今までのようにケーブルをつなぐのではなく、ステーションに置くだけで電力がスマートフォンに伝わるのです。この技術は、近づけた2つのコイルの一方に電流を流すと磁界が発生し、磁界の中にあるもう1つのコイルに電力が生まれるという原理を応用しています。この原理は電気自動車の無線充電にも応用されています。
ケーブルをつなぐという制約がないことで、今までできなかったこともできるようになるため、この「無線電力伝送」の効率を向上させる研究が進んでいます。
データ通信と充電を同時に
その1つが、充電するためのコイル状のアンテナで同時にデータ通信を行い、充電状況などの情報をやり取りし、充電を補助するシステムです。充電状況は刻々と変化し、状況によって充電効率が変わるため、状況に合わせて機器を細かく制御することによって、充電効率を向上させるのです。
このシステムでは、例えばスマートフォンなら充電時間を半分にすることができると考えられています。電力の周波数やコイルの材質、部品の性能など、システムに関わるさまざまな要素について、その特性の研究が進んでいます。
海底での作業効率を飛躍的に向上
もう1つ無線電力伝送で注目されているのが、海中での無線充電です。現在は、海底作業で使うロボットなどの充電式の機器については、電力が尽きれば海面に上がって充電することが一般的です。海中で長いケーブルを使うこともなく無線充電できれば、その作業効率が格段に向上します。しかし、海水には塩分が溶け込んでおり、そのイオンにより大気中よりも充電効率が非常に悪いのです。そこで、イオンが無線電力伝送にどのように影響しているのかという原理の解明が進んでいます。
無線電力伝送の効率化が進めば、いつでもどこでも、さまざまな機器が、ケーブルのわずらわしさなく、素早く充電できる便利な未来が待っています。
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先生情報 / 大学情報
東海大学 工学部 電気電子工学科 准教授 稲森 真美子 先生
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