世界が待ち望む低コストで環境にやさしい太陽電池
再生可能エネルギーを普及させるために
太陽光や風力、水力など自然が生み出す再生可能エネルギーを使って発電した電気を、化石燃料や原子力で発電した電気より高く、国が定める固定価格で買い取る制度が日本でも2012年にスタートしました。コスト高を理由に普及が遅れている再生可能エネルギーによる発電を広めることが狙いです。
この制度の後押しもあり、急速に増えているのが太陽光発電です。今後さらに普及させるには、低コストで環境にやさしい次世代の太陽電池の開発がカギになっているため、世界中で研究が行われています。
色素の働きで電気エネルギーをつくる
そのひとつとして期待されているのが、「色素増感(しきそぞうかん)太陽電池」です。これは太陽光のある波長を吸収する色素を使い、光エネルギーを電気エネルギーに換えるものです。現在、市場の約90%を占めるシリコンを使った太陽電池は、薄く削るための加工技術や大規模な装置が必要ですが、この色素増感太陽電池は発電の仕組みがシリコン太陽電池とは異なるため、構造がシンプルで小さな設備で製造できることが特長です。また材料費もシリコンに比べ2分の1から3分の1と安くすみます。
色素増感太陽電池を製品化するために
しかし、色素増感太陽電池にもいくつか課題があります。太陽光を電気エネルギーに変換できる割合(変換効率)がまだ小さいのです。研究レベルでシリコン太陽電池の変換効率が25%であるのに対し、色素増感太陽電池は12~13%です。また雨風や気温差の影響を受ける屋外では安定性や耐久性が重要になりますが、現状の色素増感太陽電池は液体(電解液)を使うので、液漏れや蒸発の心配もあります。
これらの課題を克服しようと、新しい仕組みや新材料の開発が進んでいます。いずれは枯渇するだろうといわれている石油などの化石燃料に頼らず電力を安定的に得ることは、いまや地球規模の関心事といえます。低コストでより効率のよい、そして頑丈な太陽電池の誕生が待たれています。
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