「ブランドもの」をもつと個性的? マーケティングと社会の関係

マーケティングの影響
商品をうまく売る方法を「マーケティング」といいます。これによって商品が売れ、企業が潤い、社員や取引先の生活を豊かにすることには大きな意義があります。しかし、マーケティングが社会や消費のあり方を変えていることにも目を向ける必要があります。1960年代のアメリカでは、マーケティングによって企業活動が活発化した結果、環境破壊や商品の偽装といった問題が起こりました。これを発端に、「マーケティングが社会に与える負の影響」を真剣にとらえる必要が生じてきたのです。
自分に必要なモノは誰が決める?
例えばウェアラブルデバイスのような、それまで想像もできなかった画期的な新製品を、もし無名の企業が売り出したら、「本当に必要?」「高すぎじゃない?」など、厳しい評価を下すのではないでしょうか。しかし、全く同じ製品を有名なスマートフォンブランドが売り出した場合はどうでしょうか。「私たちの生活を一変させる製品だ」「このブランドが設定しているのだから価格も妥当なはずだ」と好意的に受け入れるのではないでしょうか。そうだとすれば、自分に必要な製品や支払ってもよい価格の決定権をブランドに譲り渡していることになります。
個性もタイパで
ブランドは個性のあり方も大きく変容させました。そもそも個性とは他者とは異なる自分の特質であり、人間関係の中で切磋琢磨しながら培っていくものです。しかし、それには時間がかかります。人間関係が煩わしいということもあるでしょう。そのため、個性的でありたいからブランドを買う、という消費行動がみられます。時間がかかる煩わしいプロセスは省略して、タイパよく個性を手に入れようというわけです。
マーケティングのあるべき姿を考えるとき、自社の利益を最大化させるだけでなく、「社会を良くする」「本当の意味で人々に求められることをする」という視点が欠かせないはずです。個別の企業の活動から視野を広げて、より大きな視点で社会との関りを考えることも、マーケティングを研究する意義なのです。
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