ジェンダーの概念と日本社会が抱える問題との接点とは
2種類ある性差の概念
生まれたときに決まっている男女の性を「生物学的性差」と言います。その対立概念として「社会的性差(ジェンダー)」というものがあります。この概念を獲得したことで、現代の私たちは「男女の差は生まれつき決まっている」という制約から自由になれました。子どもを産むことは男性にはできませんが、子育てで男性にできないことは何一つないと断言できるのも、ジェンダーの概念があるからです。このジェンダーを研究するのがジェンダー論です。
身近なジェンダー論
「ジェンダー論なんて考えたことないや」というあなたの身近にも、ジェンダーの問題はあります。例えば同級生のカップルがデートをして、食事などの費用を男の子が全部支払うことは「当然だ」「頼もしい」と思うでしょうか。それでは逆に、女の子が全部支払ったら、「そんなカップルはいないよ」と思いますか? それはなぜでしょうか。
このように考えると、個人差はありますが、私たちはいつの間にか性差による役割を決めつけていることに気づきます。
社会問題とかかわるジェンダー
そして、ジェンダー論はこのような個人の問題にとどまらず、社会問題とも密接にかかわっています。
あなたのお父さんぐらいの年代の日本の男性は、高度成長期のように賃金が右肩上がりでもなく、終身雇用のような身分保障もないのに、残業をいとわず仕事漬けの人が多いでしょう。彼らは賃金や身分の条件は変化しても、旧来の「男が稼がなければ」というプレッシャーに押しつぶされそうになっているのです。男性の自殺率が高いのはこのことと無関係ではありません。また、これでは若いお父さんも育児や家事をする時間がありませんし、少子化問題は解決しないでしょう。今の日本は、男女関係なく、自らの意思で働き、家事や育児ができる働き方(男女共同参画)を実現することが急務だと考えられています。
ジェンダーと働き方の関係を考えていくと、日本社会の問題点が明らかになってくるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
東京大学 教養学部 総合社会科学科 教授 瀬地山 角 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
社会科学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?