アートと社会学との、実は近い関係

アートと社会学との、実は近い関係

もともとは人間の「技」

現代における「アート」は、絵画や彫刻など芸術的価値に比重を置いた創作分野を指しています。しかしアートとはギリシャ語の「テクネー(技術・手仕事)」やラテン語の「アルス(技術・技能)」などが語源とされ、人間が用いる「技」を示すものでした。その中で、狩猟の技術や農業技術から派生し、人間が暮らす中で便利なものを生み出す技術分野を「メカニカル・アーツ」と呼びます。近代になりそこから独立したのが、芸術性に特化した絵画などのファインアート、いわゆる現代では「アート」と呼ばれるものです。
アートは単なる娯楽で実社会には役に立たないものと思われがちですが、人間の創造性を具現化するための技術ととらえれば、社会的な意味を持つものだと言えます。

アートが持つ2つの機能

社会学的な観点からすると、アートには2つの機能があり、一つは「批判的機能」です。芸術分野では現実を模倣して虚構の世界を表す作品が多く見られます。日本の漫画やアニメなどにも多く、フィクションの中に現代社会への批判や警鐘が込められているものが見られます。エンターテインメントとして見せることで、批判的な目線や問題提起をわかりやすく伝えているのです。
もう一つが「カタルシス(精神浄化)的機能」で、現実を否定せずに和解するものです。例えばアニメなどで矛盾に満ちた世界を批判ではなく非現実的に美しく表現して、そこに面白さや気晴らし、現実を忘れて没頭できるカタルシスを感じさせるものです。漫画文化や推し活などサブカルチャーにおいてよく見られます。

社会学との深い関わりと役割

社会学は人間をテーマに現実社会の仕組みをひも解いて、当たり前と思われていることを「本当かな?」と確認し、よりよい社会を考えていく学問です。一方で現代におけるアートとは、フィクションを通して先入観や常識を疑い、新しい生き方や可能性など自由に生きられる選択肢を提示する役割を持っています。アートが持つ力は、社会に大きな影響を与えているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

龍谷大学 社会学部 総合社会学科 現代社会領域 准教授 清家 竜介 先生

龍谷大学社会学部 総合社会学科 現代社会領域 准教授清家 竜介 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

社会学、理論社会学、社会哲学

メッセージ

「社会学の巨人」ともいわれる社会学者ジグムント・バウマン(1925-2017)は、「社会学は自由になるための社会的技術である」というメッセージを遺しました。自分の人生は運命として定められたものではありません。常識にとらわれることなく、より幸せに自由に生きるためのさまざまな選択肢を見つけるための手段として、社会学があると私は考えています。社会を観察し分析するだけではなく、現代社会の問題解決に積極的にかかわっていく学問です。あなたとともに学ぶ時間を楽しみにしています。

龍谷大学に関心を持ったあなたは

Less Me More We
あなただけの世界から、私たちを想う世界へ

あらゆる「壁」や「違い」を乗り越えるために、「まごころ」を持ち、「人間・社会・自然」について深く考える人を育む。それが、龍谷大学の教育のあり方です。自分自身を省み、人の痛みに感応して、他者を受け容れ理解する力を持つ。人類が直面するリアルな課題と真摯に向き合う。そして様々な学びを通じて本質を見極める目を養い、自らの可能性を広げていきます。