講義No.06194 経済学

なぜ消費税を上げなければならないのか?

なぜ消費税を上げなければならないのか?

上げても上げなくても「怖さ」がある!?

日本では消費税を上げることに賛否両論があります。そして、消費税率を上げることと上げないことにはそれぞれの怖さがあります。上げる場合は、物価が上がり、生活が苦しくなるという「目に見える怖さ」、これは個人がそれぞれ生活の中で体験するものです。一方、上げない場合は「目に見えない怖さ」があります。つまり、税収をしっかり確保しないと、ある日、国が財政破たんしてしまうかもしれないのです。日本は2013年、GDP(1年間に企業や個人が日本国内で稼ぐお金の総額)が500兆円になる見通しなのに対して、その2倍の1000兆円もの借金を抱えているという財政的に非常に不健全な状態にあるためです。

税収があるから国債を発行できる

国は、「国債」を発行して、それを買ってもらうことで借金をします。日本は年間新たに50兆円分の国債を発行しています。毎年、新たにそれだけ巨額の借金をしているのです。一般に借金をするときには、お金を返せなかったときに代わりとなる担保が必要ですが、国が借金をする際の担保は何でしょうか。それは税金です。つまり、国には税収があり、それで必ずお金を返してくれるという信用があるために国債を買ってもらえるのです。もしその信用がなくなって国債を買ってもらえなくなれば、国債の価格は暴落し、国は破たんするでしょう。

しっかりとした目標設定を

そうした意味でも国は税収をしっかりと確保する必要があります。ただそのときに重要なのは、税金が何のために使われるのか、どう役に立つのかといった目標をはっきりと示すことです。その目標によって、誰がどのくらい税金を払うべきなのかが見えてきます。その上で、消費税にするのがいいのか法人税にするのがいいのか、という手段を決めるべきなのです。日本は目標設定をいつもあいまいにし、手段だけが先に決められてしまうために、時折、最悪な選択をしてしまうのです。大切な税金だからこそ、国民は関心を持つ必要があるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

神戸大学 経済学部  教授 玉岡 雅之 先生

神戸大学 経済学部 教授 玉岡 雅之 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経済学、財政学

メッセージ

教科書によると、税は社会のために払わなければならない「会費」だとされています。なぜそんな会費を払わなければいけないんだろうという疑問を持ち、私は税の研究を始めました。そしていまは、税が社会や経済のいろいろな問題を解決していくための薬になるのではないかと考えています。経済学というのは、世界で起こっているさまざまな問題を解決する、つまり病気を治療する医者のような学問であると思っています。あなたもぜひ、大学に入って、そのような医者になれるように、一緒に勉強していきましょう。

神戸大学に関心を持ったあなたは

神戸大学は、国際都市神戸のもつ開放的な環境の中にあって、人間性・創造性・国際性・専門性を高める教育を行っています。
また、神戸大学では、人文・人間系、社会系、自然系、生命・医学系のいずれの学術分野においても世界トップレベルの学術研究を推進すると共に、世界に開かれた国際都市神戸に立地する大学として、 国際的で先端的な研究・教育の拠点になることを目指します。