韓国社会に見る、政治と経済の独特な関係性
急速な経済発展がつくり出した複雑な社会
朝鮮戦争によって大きなダメージを受けた1950年代、韓国社会は経済的に困窮し、最貧国の一つといわれるほどでした。財政再建が喫緊の課題となった政府は、海外から得た多額の資金を投入し、1960年代後半から急速に復興します。「漢川(はんがん)の奇跡」と呼ばれる、この一連の経済発展に貢献したのが財閥企業でした。
いまや経済大国となった韓国は、一見すると豊かな国ですが、問題も多く抱えています。国を急成長させた経済発展のプロセスが、この複雑な社会を生み出した一つの要因です。
国の経済発展と国民の不平等感
1997年の通貨危機を契機に、韓国国内に新しい自由主義思想が登場し、経済に関する自由化が加速しました。しかし、経済の発展は一方で個人の間に格差と不平等感を生み、政府に不信感を抱く国民が増えていきました。
独裁制が長く続いた韓国では、経済発展をめざす政府と財閥企業が密接な関係を築いてきたことも、不平等を生み出した原因です。サムスン、現代自動車、LGの3社だけで韓国経済の約4割を占め、政府との関係を切り離すことができないのです。国のリーダーは何度も変わり、そのたびに中小企業支援や社会格差の縮小をめざし、さまざまな改革を試みました。しかし、しっかりと根付いてしまった社会構造の根幹を崩すことは難しく、その状況は今も続いています。
世論が政治に反映される民主化に向けて
組織やチームが円滑に活動するために、リーダーは重要な存在ですが、韓国ではリーダーである大統領の資質が問われ続けてきました。1987年に民主化を宣言し、大統領の直接選挙制が実現しましたが、世論を政治に反映させるという一般的な民主政治のシステムが機能していない政治体制を変革することがまず必要です。
政治と経済システムとの癒着を断ち切り、国際社会の変化や地域間の諸問題への対応はもちろん、国内に平等な社会をつくるための方策をとることが韓国政府には求められています。
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先生情報 / 大学情報
国際教養大学 国際教養学部 グローバル・スタディズ領域 准教授 ケビン・ハックムス 先生
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