森を森のままに 観光で森林に関わる仲間を増やす

森を森のままに 観光で森林に関わる仲間を増やす

人と森林をつなぐキーワードは「観光」

きれいな水は森によって育まれます。海と山は川でつながり、川の上流で森林が荒れれば下流で水害が起きることもあります。では、人と森林との関係はどうでしょうか。かつて森林は、人にとって燃料や木材を得るための身近で大切な場所でした。やがて都市部に人口が集中するにつれて、多くの人々にとって森林は遠い存在になっていきました。
今、サステイナブルな資源として木材が再注目されています。森林は炭素を貯蔵し、CO₂(二酸化炭素)の循環にも重要な役割を果たしています。森林が森林のままで価値を持って人の社会に存在し続けるために、キーワードになるのは「観光」、つまり森林の観光レクリエーション利用です。

森を森のまま次の世代につないでいくために

豊かな森を維持するには適切な管理が必要です。特に下刈りや間伐を繰り返しながら育成する人工林の管理は費用も手間もかかりますが、1980年代頃からの林業の採算性の低下によって管理不足による森林の劣化が問題となってきました。そこで、企業が社会貢献活動の一環として森林の再生に協力する「企業の森」という取り組みが行われています。和歌山県では、県が「出資するだけではなく森で地域交流も行う」という条件付きで企業の森を誘致したところ、イベントや体験活動につながり大きな経済波及効果が生まれました。フィールドワークによる聞き取りでは、「地域交流で特産品を使ったお弁当をリクエストされ、地元では当たり前だと思っていたものの価値を再認識した」といった、数字では表せない効果も確認できました。

豊かな森を育む社会経済システムを探究

企業の森の研究では、地域が企業を森づくりの仲間に迎え入れた、その影響の大きさが明らかになりました。観光やレクリエーションを通じて人々が森林に触れ、楽しんだり学んだりする機会を増やすことは、将来的に森づくりの輪に加わる人々を増やすことにつながるでしょう。地域の経済や人の交流にもさまざまな良い循環が起きるはずです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

和歌山大学 観光学部 観光学科 教授(学部長) 大浦 由美 先生

和歌山大学 観光学部 観光学科 教授(学部長) 大浦 由美 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

観光学、森林経済学

先生が目指すSDGs

メッセージ

観光は単なるビジネスと捉えられがちですが、実は社会のあらゆるところに関係していて、これからの社会を良くしていくことができる潜在的な力や可能性を持っています。学問としても幅広く奥が深いので、人や社会との関係、自然、経済などさまざまなアプローチができます。「まだ自分のやりたいことが見つかっていない」という人にもおすすめです。大学に入ってから、きっと自分の好きな方向が見つかります。観光が持っているより良いポテンシャルを発揮させるための仕組み作りを、一緒に考えていきませんか。

和歌山大学に関心を持ったあなたは

和歌山大学は未来を託そうとする若者、保護者のみなさんの願いを受けとめ、若者とともに希望ある未来を創り出したいと決意しています。
新たな学びの場・新たな生活の場へ、期待とともに不安もあると思いますが、国立大学の強みは、学生数に対して教員数が多く、学生と先生の"つながり"が強固なことです。なかでも和歌山大学は、小規模クラス授業や対話的授業を重視するなどきめ細やかな教育と、行き届いた学生生活支援の体制を整えています。そして、卒業後の進路・就職を拓くキャリア・サポートには定評があります。