「日本古代史」は謎だらけ!
教科書に載っていることも真実とは限らない?
日本の歴史の中でも、飛鳥、奈良、平安時代の頃に関する「日本古代史」の研究は、現代でもまだわかっていない謎が数多く残されている分野です。ある出来事について、説が一つに固まっていないことも多く、歴史の教科書に記されている内容も、数ある説の中の一つの有力なものでしかない場合がたくさんあります。過去にも、教科書に載っていた説自体が丸ごとひっくり返ってしまったという例も珍しくありません。
木簡の削りくずも、貴重な史料
日本古代史に謎が多い理由には、当時の史料が非常に少ないことが挙げられます。当時のことが伝えられている歴史書や法律書、物語などはありますが、その数は限られています。そのため、日本古代史の研究者は、それらの文献史料をさまざまな角度から精査して組み立てることによって研究を行っています。
当時の文字史料は、紙に記されたものだけではありません。短冊状の木の板に墨で文字を記した「木簡(もっかん)」は、手紙や記録、商品の荷札や通行証など幅広い用途に用いられていました。木簡は表面を削り取ってから新たに文字を書いて再利用されていたので、表面の削りくずに文字の痕跡が残っているものまでもが、貴重な史料として扱われています。また、食器などに持ち主や地名、組織名などが記されている「墨書(ぼくしょ)土器」も、当時を物語る貴重な文字史料として研究対象となっています。
日本古代史の研究の醍醐味とは
1988年に奈良県で発掘された長屋王邸宅跡では、約4万点に及ぶ大量の木簡が発見され、当時の長屋王とその一族が、それまで考えられていた以上に豪勢な生活を送っていたことが明らかになりました。これも、歴史書のみではわからなかった新事実です。いまだに数多く残る日本古代史の謎を解くには、あらゆる種類の史料を突き合わせ、わずかな手がかりから事実により近い説を練り上げていく根気強さが求められます。しかし、その謎解きの難しさこそが、日本古代史研究の醍醐味でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 文学部 史学科 准教授 宮川 麻紀 先生
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