雲をつかむ研究が人命を救う

雲をつかむ研究が人命を救う

温暖化現象は豪雨をもたらす

雷雨は古くから恐れられてきた気象現象であり、さらに近年では時間雨量が100ミリを超える集中豪雨による災害が増えています。加えて、2008年から気象庁は竜巻注意報の発令を始めました。これらの命にかかわるような大気現象は「極端気象」と呼ばれています。日本は周囲を海に囲まれているため、地球温暖化により1度でも気温が上昇すれば、大気中に含まれる水蒸気の量が多くなり、積乱雲が発達することがわかっています。

エネルギーがすさまじい冬の雷

夏から秋にかけての台風によって引き起こされる竜巻は、宮崎、高知、濃尾、関東の平野部に被害が集中します。一方、日本海側では冬に落雷や竜巻が起こります。2005年に起きた羽越線の脱線事故は冬の竜巻が原因でした。北陸では11月半ばから12月にかけて、猛烈な季節風の中で発生する落雷を「鰤(ぶり)起こし」と呼びます。冬の雷は夏の雷より落雷数が少ないですが、中には夏の雷の100倍以上に達するエネルギーを持つこともあります。これはスーパーボルトといわれ、日本固有の現象といえます。

スマートフォンで雲を把握

ゲリラ豪雨や竜巻は瞬発性の現象で予測が難しいと考えられています。ただ豪雨や竜巻をもたらす親雲は特別な積乱雲であり、積乱雲の発生から発達には数10分の時間を要するため、正確な計測ができれば、短時間予測や被害を減らすことは可能です。これまでの気象レーダーでは雨の観測しかできませんでしたが、最新のレーダーでは風や降水粒子を高時間高空間分解能で観測することが可能になっています。雲の様子を見ることで、1分1秒でも早い避難につなげられます。
手元のスマートフォンなどに情報を表示することができれば、日が暮れた夜や建物の中など、雲が実際に見えなくても、気象の様子を把握できます。日本語の比喩表現では「雲をつかむような話」などと言いますが、気象の世界ではレーダーで雲をつかむことが可能になってきているのです。

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防衛大学校 応用科学群 地球海洋学科 教授 小林 文明 先生

防衛大学校 応用科学群 地球海洋学科 教授 小林 文明 先生

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気象学

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メッセージ

「石の上にも3年」という言葉がありますが、研究というのは3年どころか10年、20年と続けるものです。どんなものでも長く続けられれば、必ず成果は得られるでしょう。何がどうなるかわからない時代ですから、「こんなくだらないことをやってもダメだ」などということはありません。
私は雲を眺めるのが大好きというだけで気象の勉強を続けてきました。それが今では、災害から人の命を救う研究につながっています。今、あなたが好きなことを大切にして、長く続けてみてください。

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