ナノがエネルギー問題を解決する?
ナノとマクロの世界の違い
私たちの目に見える普通サイズの世界、いわゆるマクロの世界では、結晶や金属などの物質は1モル(6×10²³個の原子)を基準に考えます。一方、ナノとは、原子や分子が数10個からなるナノサイズの極小物質を対象とします。
例えばナノの研究で注目を集めている「カーボンナノチューブ」という筒状の物質は、直径1ナノメートル、つまり10億分の1メートルという大きさであり、その円周方向はわずか数十個の炭素原子からできています。ナノ物質の特徴は、原子の並び方や形によって、大きく性質が変わるというところにあります。そうした特徴を利用して、新たに役立つ物質・構造を作り出そうという研究が進められているのです。
ナノの利用法
ナノの構造をとることでさまざまな面白い性質が出てきますが、そのひとつとして、熱電変換の性能が上がるということが挙げられます。熱を電気エネルギーに変換する効率が向上するのです。ナノの形をうまく制御すると、熱は流しにくいが電流はよく流すという状況を作り出せると予想されています。世の中には無駄になっている熱が大量にあるので、その熱を効率的にエネルギーとして利用することができ、エネルギー問題の解決につながることも期待されています。例えば、体温によって電気を発生させてセンサーを駆動させるなどということもできるかもしれません。
ナノの研究のポイント
ナノの性質が変化する要因として、どういう構造をしているかということと共に、その物質がどのくらい電子を持っているのか、ということも重要です。発現する性質については、計算によって理論上の予測を立てることは可能ですが、実際のところは実験を繰り返さないと確かめることができません。
新しいナノ物質・構造を生み出し、それがどういう性質を持っているか、また、その性質はどのようにして制御することが可能なのか、これを突き止めることが、今後の科学と技術の発展につながっていきます。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 理学部 物理学科 教授 柳 和宏 先生
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