「○○は、悪いことだが仕方がない、必要悪だ」 さて、○○とは?
200年前にもあったエネルギー問題
「○○は、悪いことだが仕方ない、必要悪というものだ」「○○をやめるだと? 経済を根幹から破壊するつもりか!」こう聞いて、なんの話を思い浮かべますか?
これは200年近く前のアメリカでの議論で、○○には「奴隷制」が入ります。しかし、現在の問題である「原子力発電所」を入れてもそのまま使えます。奴隷も原子力発電所も、経済を動かすという「エネルギー源」として広い視点からとらえると共通する部分が見えてきます。
石油は効率がいいエネルギー
1863年アメリカ大統領リンカーンは「奴隷解放宣言」に署名を行いました。同じ時期、産業革命も進行し、かつて奴隷が担っていた労働を機械が行うようになります。新しい技術が次々発明され、石炭や石油などの化石燃料がエネルギー源として使われました。ある試算によると、現代人は、化石燃料を使うことで一人あたり約60~100名の奴隷を抱えているのと同じ状態にあるといわれています。
石油は効率がよくて安いエネルギーなのです。このエネルギーを基盤に、現代文明は形作られています。しかし、いつまでこれまでと同じような形で石油を安く大量に使い続けることができるのでしょうか?
石油が使えなくなったら?
実は、エネルギーと現代文明について考えるヒントは、最近のエジプト情勢にあります。エジプトは2011年に革命が起こり、ムバラク大統領が辞任し、その後も混乱が続いています。少ないながらもエジプトは石油産出国で、かつては輸出もしていました。国が主食である小麦を輸入し、補助金を出して国民に安く販売する余裕がありました。ところが1996年石油の輸出量はピークを迎え、以降どんどんと減り続け2008年には輸入国になってしまったのです。小麦の値段は上がり、人々の不満がたまり、社会は不安に包まれました。ソーシャルメディアも駆使した大規模なデモが行われ、ついには革命にいたってしまいます。
歴史が動くとき、社会に変革があるとき、そこには技術やエネルギー問題が絡んでいるのです。
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先生情報 / 大学情報
清泉女子大学 地球市民学部 ※2025年4月開設 地球市民学科(ソーシャルデザイン領域) 教授 山本 達也 先生
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