「植物のお医者さん」になるために学ぶ植物医科学とは
植物も病気にかかる
気づきにくいことですが、植物も動物と同じように病気にかかります。地球全体の農作物で、病気による被害の大きさをみると、収穫量の3~4割が失われていると考えられています。
当然病気を防いだり治療したりするための研究は昔から行われていましたが、ウイルスはウイルスの専門、菌類は菌類の専門と、あまりにも細分化しすぎてしまいました。そして農業の現場でも、農家に指導する農業普及員という制度があるものの、近年増え続ける病気に対応しきれないという問題がありました。
そこで、総合横断的に植物の病気を扱う分野が必要だと考えられ、できたのが「植物医科学」という分野です。
梅を守るために
例えば、ウメやプラムに感染するウイルスに「プラムポックスウイルス(PPV)」があります。これはもともと日本にはなかったウイルスで、このウイルスにかかると葉や実に斑点や輪紋が出て商品価値が落ちてしまいます。ヨーロッパではプラムやモモに感染し大きな損害を出している病気です。
入ってきた経路は不明ですが、この病気が2009年、国内で初めて、梅で有名な東京都青梅市で見つかりました。
ウイルス病にかかった植物は伐採するしかありません。また、農林水産省が省令を公布したこともあり、2009年から青梅市の農家や梅林のウイルス感染した梅はすべて伐採しています。3年間感染が見つからなければ再び梅の木を植えることができるので、梅の里を復活させるためにも、早い伐採が必要になるのです。この思い切った処置にも植物医科学は大きな役割を果たしています。
文理融合の分野
植物医科学はサイエンスとしての側面が大きい分野ですが、これを実社会で役立てるためには法律や制度、経済、政策論など文系の分野も深く学ぶことが必要です。活躍の場としては公務員や種苗会社、農薬会社などの農業関連はもちろん、食品業界や環境緑化ビジネスなど幅広く考えられます。まだ歴史の浅い学問ですが、人類の未来に役立つ学問として、植物医科学はこれからますます注目されるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
法政大学 生命科学部 応用植物科学科 講師 鍵和田 聡 先生
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