より速く走るための姿勢を「地面反力」から明らかにする

より速く走るための姿勢を「地面反力」から明らかにする

「速さ」と「地面反力」

私たちは歩いたり、走ったりするときは地面を蹴ります。このとき、地面から受ける反発力のことを「地面反力」と呼びます。人が速く走るためには、地面を踏みしめたときに発生する地面反力を、進行方向側に向けることが有効であることが先行研究によりわかっていました。そこで、どうすればこの地面反力を進行方向に向けることができるのかについて、詳しい調査が行われました。

地面反力の方向は姿勢で変化する

実験では、まず地面反力を測定する「地面反力計」を埋め込んだ床の上で、被験者にクラウチングスタートを行ってもらいました。スタートの際の地面反力の測定と、スタート時の動作をモーションキャプチャで測定し、これらのデータを基にシミュレーションモデルを作成します。このモデルから、どのような姿勢を取れば地面反力をより効果的に進行方向に向けられるのか、検証が行われました。その結果、走るときに脛(すね)を前に倒すことで、地面反力が進行方向に向きやすいことが明らかになりました。この姿勢は陸上競技の選手やコーチの間では経験的に認識されていましたが、その理由を具体的に調査した例はありませんでした。この検証で、脛を倒すことで地面反力が進行方向に向くメカニズムが実証されたのです。

知見を生かした測定機器の開発

「スポーツバイオメカニクス」は、このような経験的な知識に対して科学的で明確な答えを提供できます。しかし、多数のカメラや選手への測定用マーカーの装着が必要となり、競技中の測定に用いることはできません。マーカーレスのモーションキャプチャも開発されていますが、導入コストが大きいという課題があります。そこで、このような事例研究を通じて、競技者と研究者の両方の視点から、より手軽で低コストな測定機器の開発も進められています。簡単に動きを測定できるようになれば、走ることだけでなくさまざまな運動競技の発展にも寄与するでしょう。

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先生情報 / 大学情報

久留米大学 人間健康学部 スポーツ医科学科 講師 大島 雄治 先生

久留米大学 人間健康学部 スポーツ医科学科 講師 大島 雄治 先生

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スポーツ科学、スポーツバイオメカニクス

メッセージ

私自身がスポーツ競技に取り組んできた過程で、疑問に感じる身体動作がありました。数学が好きだったこともあり、現在は体の動きやその測定に着目した研究を行っています。競技者のときは肉体の成長に楽しさを感じていましたが、同様に研究を通して自分が高まっていく点が大きな醍醐味(だいごみ)です。スポーツバイオメカニクスに関する研究手法はさまざまなものがありますが、利便性を高め、多く人が手軽に動作分析するためにはまだまだ改善の余地があります。今後はそういった研究手法の開発にも関与したいと考えています。

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93年の歴史と伝統を積み重ねた久留米大学には、文学部・人間健康学部・法学部・経済学部・商学部・医学部の6学部13学科、大学院4研究科そして20の研究所・センターなどがあります。「個性尊重、資格取得、地域貢献、国際感覚の育成、高度情報化への対応」を重視し、多くの優秀な教授陣が学生一人ひとりの能力を伸ばしながら、社会への適応力を育み、ゼミナールを中心とした授業で、教員と学生の触れ合いを大切にしています。文系・医系の両キャンパスに新たに教育・研究棟が完成し教育環境もさらに充実しました。