講義No.06487 社会福祉学

誰もが「生きやすい社会とは何か」を社会福祉のマインドで考える

誰もが「生きやすい社会とは何か」を社会福祉のマインドで考える

現代社会はなぜ生きづらいのだろうか

世の中には、ざまざまな「生きづらさ」を抱えながら生活している人たちがいます。生きづらさは、個人だけの問題ではありません。社会の仕組みや周囲の人々との相互作用によって、生まれてくるものです。
我が国の5大疾患として、「がん」「脳卒中」「急性心筋梗塞」「糖尿病」「精神疾患」が挙げられます。精神疾患で医療機関にかかっている人は300万人を超えており、なかでも認知症やうつ病の患者さんが増えています。これは他人事ではなく、誰にでも起こり得ることです。

話を聞くことが支援の方向性を探る第一歩

精神疾患(精神障がい)の患者さんの中には、心の病気そのもののつらさに加え、家族関係の問題、職場や地域の人の無理解、偏見、差別などに悩む人も少なくありません。福祉の視点から、このような人を支えるために何ができるでしょうか。それを考えるには、まずは当事者の話を丁寧に聞き、悩みの背景を知ることが重要です。当事者の生の声から、想像もしていなかった厳しい現実を知ることにもなりますが、その言葉には病気の回復や社会復帰へのヒントが隠されています。例えば、患者さんの趣味や日々の習慣などを知ることが、よい方向への変化をもたらすきっかけになることもあるのです。

個別支援とともに社会のあり方を考える

長期入院後に退院する患者さんは、住む場所や日常生活、仕事など多くの不安を抱えています。地域社会に定着できるように、NPOや民間施設、行政の取り組みも進められています。「社会福祉士」や「ソーシャルワーカー」といった福祉の専門職は、福祉サービスなどの社会制度や資源としての人々と個人をつなぐ役割を担います。
地域の中で生活できるようにその人を支援するには、個人の心情だけでなく行政や社会の仕組みを知り、広い視野で問題を分析する力が求められます。「生きやすい社会とは何か」を多角的に考え、人間の回復力を信じて問題を解決することが、「社会福祉のマインド」なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 生活科学部 人間福祉学科 助教 清水 由香 先生

大阪公立大学 生活科学部 人間福祉学科 助教 清水 由香 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

社会福祉学、精神保健福祉学、精神保健学

メッセージ

福祉は、困った人に直接手を貸すだけではなく、社会全体の仕組みを広く理解した上で、問題の解決策を考える視点が必要です。ですから福祉の問題に興味がある人は、まずは新聞を読むことを日課にしてください。新聞には、政治や経済などのニュースもあれば、悩み相談など読者の声も載っていますから、これらを通じて、世の中で起こっている出来事に興味を持ってほしいと思います。そして、社会の中で、さまざまな「生きづらさ」を抱えながら生活をしている人たちがいることに、目を向けてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?

大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。