夏の猛暑を乗り切るための「熱的快適性」とは

夏の猛暑を乗り切るための「熱的快適性」とは

深刻さを増すヒートアイランド現象

都市部の気温が郊外に比べて高くなることを「ヒートアイランド現象」と言います。都市部は緑が少なく、高いビルが立ち並んでいて、風が通り抜けにくくなっています。その上、コンクリートやアスファルトで覆われているので、都市部は照りつける太陽からの熱や、建物の空調設備や自動車などから出る排熱を溜め込みやすくなっているのです。このような環境が原因で、夏になると熱帯夜で寝不足やストレスを感じる人は多く、また昼間に熱中症になる人も増加しています。

ミストの効果で快適に

健康を損ねず快適に過ごすために、行政は、ビルの屋上の緑化や昔ながらの知恵である朝夕の「打ち水」の推奨、排熱を使った空調システムの構築など、さまざまな対策を行っています。「ドライミスト」の散布もそのひとつです。これは、水道水に圧力を加えて霧状(ミスト)にしたものを撒き、人工的に周辺の温度を2~3度下げようというもので、ミストが飛ばされない程度のほどよい風が吹き抜ける、ビルの谷間や商店街など半屋外に設置されています。ミストが蒸発するときに周囲から熱を奪う「顕熱(けんねつ)」の仕組みを利用して、温度を下げるのです。このドライミスト装置の最大のメリットは、クーラーを使うより断然省エネルギーで快適な空間を創出できることにあります。

快適さを表す指標「熱的快適性」

ミスト散布エリアを通ると、皮膚に付着したミストが汗とともに蒸発するので、実際は2~3度しか気温が変わらなくても、体感温度はそれより涼しく感じます。これは、<快適さ>を測る「熱的快適性」という指標によっても証明されました。熱的快適性は、温度、湿度、風速、太陽や照明からの放射熱、身に着けている衣服量、立つ・座る・作業するなど動作量の6つの要素をもとに求めることができます。
設備はただつくればよいのではなく、きちんと効果を測定し評価してこそ、効率よく省エネルギーで快適な空間をつくることができるのです。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 生活科学部 居住環境学科 准教授 ファーナム・クレイグ・エドワード 先生

大阪公立大学 生活科学部 居住環境学科 准教授 ファーナム・クレイグ・エドワード 先生

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居住環境工学

メッセージ

生活の多様化にともない、建築や住宅、インテリアなど、環境・空間への関心は高まっています。
その中で、私は建築設備の評価に関する研究を行っています。工学や物理学、デザイン、心理学など幅広い知識が必要ですが、「省エネで快適に人々が過ごせる場所をつくる」という大きなやりがいのある分野です。どんなに高いビルでも、空調機器やエレベータ、給水・排水といった設備がなければ、太古の人が暮らした洞窟と変わりがありません。知恵と工夫で環境・空間の問題解決にチャレンジしたいあなたを待っています。

大阪公立大学に関心を持ったあなたは

2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。