生活というフィールドを俯瞰し、その解決策を導く「生活科学」
複数の要素から構成される生活
人間が生きていくためには、働くだけでは十分ではありません。働いて得たお金で食べ物や住まいを確保し、休息もしなければなりません。また、新たな家族をつくり、子どもを育てることもあります。さらに、病気にかかれば治療し、地域の人と助け合う関係をつくる必要もでてきます。このように、私たちの生活をあらためて考えてみると、「労働」「食事」「家計」「住まい」「子育て」「家族」といった複数の要素から成り立っていることがわかります。こうした個別の要素についての専門的な知識や理論を学び、さらに互いの要素を関連付けながら総合的に考える学問を、「生活科学」といいます。
子どもの貧困を考える
日本は先進国といわれていますが、7人に1人の子どもが「貧困」の状態にあるとされています。食や住まい、教育や社会活動の面での「格差」が問題になっています。こうした子どもの貧困問題も生活科学の重要なテーマです。子どもの貧困はこれまで社会福祉や教育の枠組みの中で議論されてきました。しかし、例えば、福祉機関や学校での相談支援や地域での「子ども食堂」などの「局面ごとの支援」では根本的な解決は望めません。多くの場合、貧困の背景は世帯の収入が不足していることがあります。社会保障的な観点から家計を助けたり、安定した就労につなげたり、家族が安心して暮らせる住宅の確保を行うといった、幅広い視点からの総合的な支援が不可欠なのです。
俯瞰的な視点を持つ
子どもの貧困だけでなく、一人暮らしの高齢者やひきこもりの増加、あるいは中高年の過労死問題など、生活領域のさまざまな要因が関係する社会問題は数多くあります。また、新型コロナウイルスの感染拡大以降、リモートワークが広まりましたが、「労働」と「生活」の場が重なることで、食や住まいについて、これまでになかった課題が出てくることも予想されます。こうした生活というフィールドで発生する問題について、俯瞰(ふかん)的にとらえ、生活の質の向上に役立てることが生活科学の意義なのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 生活科学部 人間福祉学科 教授 所 道彦 先生
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