講義No.06597 経済学

よりよい社会をつくりだす「イノベーション」をどのように促進するか

よりよい社会をつくりだす「イノベーション」をどのように促進するか

イノベーションは経済発展の原動力

電力や自動車、コンピュータなど、新しい技術や製品を生み出す活動、「イノベーション」は、経済を発展させ、暮らしを豊かにします。石器時代から現代まで、さまざまなイノベーションがあったからこそ、人類は現在の豊かな生活を手に入れたのです。今後、労働力も貯蓄も減少していく少子高齢化社会で、従来の暮らしを維持するには生産性の飛躍的な向上が必要で、そのためにイノベーションがこれまで以上に求められています。

成功の陰に多くの失敗

しかし、イノベーションへの挑戦がすべて成功するわけではなく、むしろ、1つの成功したイノベーションの陰には多くの失敗があります。例えば、ある病気の特効薬を開発する場合、病気の原因を解明し、それに最もよく効く成分の候補を、組み合わせをさまざまに変えながら、実験を繰り返して探します。大変な資金と時間の掛かるプロセスで、成功の確率は低いのです。このように、失敗のリスクが高ければ、イノベーションへの取り組み(研究開発)が行われなくなる可能性すらあります。

イノベーションを促進する経済環境を考える経済学

したがって、多くのイノベーションを生み出すためには、まずイノベーションへの取り組み(研究開発)を活発にすることが必要であり、次にイノベーションへの取り組みを成功しやすくすることが重要です。しかし、残念なことに、これをやればイノベーションが必ず成功するという魔法の杖はありません。
企業戦略や法制度などさまざまな要素がイノベーションに影響します。例えば、発明を保護する知的財産(特許)制度がそのひとつですが、ライバル企業との競争や、発明者のインセンティブ(誘因)などを考慮して、政策や制度を設計する必要があります。経済学の考え方や分析方法は、イノベーションを促進するために政策や制度をどのように設計すべきかを考える上で大いに役立つのです。

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一橋大学 経済学部  教授 岡室 博之 先生

一橋大学 経済学部 教授 岡室 博之 先生

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経済学

メッセージ

大学での勉強は、高校の勉強と大きく違い、自分でテーマを探すことが中心になります。「自分が勉強したことをベースにテーマを見つけ、その解決策も自分で探す」、これが大学の勉強であり、その方法を教えるのが大学です。
こうした取り組みを通じて学んだことは一生忘れませんし、また、使える知識にもなります。ですから、今から好奇心を持って、いろいろなことを勉強してください。そうした取り組みが、大学で自分のテーマを見つけることにも役立つはずです。

先生への質問

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一橋大学の大きな特色として、まず第1に挙げられるのは、我が国で最も伝統のある社会科学の総合大学として、常に学界をリードしてきたという長い歴史と実績、並びにこの伝統を受け継ぎ、人文科学を含む広い分野で、新しい問題領域の開拓と解明を推進する豊富な教授陣に恵まれていることです。第2は、商学部・経済学部・法学部・社会学部の垣根が低く、学生は各学部の開設科目を自由に履修することができます。また、10人から15人程度の少人数で行われているゼミナール制度(必修)を核とする少数精鋭教育も本学の特色のひとつです。