コーヒーからAIまで、ビジネスへ生かす経済学のデータと分析モデル
数値やデータに基づく分析
企業のビジネス戦略の一例として、「タリーズコーヒー」や「スターバックス」などのコーヒーチェーンでは、ドリンクをお得におかわりできる「One More Coffee」サービスがあります。対象のドリンク限定で、注文したお店で、その日のうちにといった条件も含めて、サービスの立案には「顧客はコーヒーに1日いくらまで支払ってもよいと考えるのか」「それに対してどれぐらいのコストがかかるのか」「どのような料金設定にすれば収益が上がるのか」といった、数値やデータに基づいた経済分析的な手法が使われています。このように、ある条件における消費者の行動や販売数量の予測、それに対する消費者の反応を数学的なモデルに落とし込んで考える経済学の手法を「理論研究」と呼びます。経済学には、ある状況下での人の行動と結果の結びつきを数量的に理解する、という特徴があります。
自動運転の損害賠償を考える
将来AIによる乗り物の自動運転が実用化されて事故が起こった場合、その賠償のルールを確定する必要があります。メーカーが負うべき損害賠償の割合や、その算出のための走行データなど個人情報の取り扱いに関するルールも、日本において現在は未確定です。そこで、過去に起こった自動車事故の事例や、個人情報の取り扱いについての事例などから得たデータを組み合わせながら、精度の高い分析モデルを構築することが進められています。
学問の枠を超えて
このように、経済学はデータや数値をベースにしてビジネス戦略の立案や消費者行動の理解に役立てられます。また、統計学やコンピュータ科学を使ってビッグデータの解析を行うデータサイエンスと密接な関係にもあります。ほかにも、工学の手法で開発した自動運転車をどう収益化するのか、あるいは建築学の手法で計画した都市インフラの収益性をどう高めるのかなど、各学問分野とビジネス領域とをつなげる役割も期待されています。経済学は、文系・理系の枠を超えて、ビジネス全般に幅広く応用できる柔軟で奥の深い学問なのです。
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大阪産業大学 経営学部 商学科 准教授 生田 祐介 先生
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