ニッポンの官僚はそんなに悪くない
世界に冠たる日本の官僚制度
世界規模で進行するグローバル化の荒波は、バブル経済の破綻以来長らく不況に沈んできた日本社会を着々と浸食しています。社会全体を覆う得体の知れない不安の中で、既成の秩序を破壊する強力なリーダーの待望、一方で官庁の裏金疑惑や天下り批判のように、従来の「非効率的」で「腐敗した」日本的システムを支えてきた官僚へのバッシングという事態が進行しています。
でも何でもかんでも「官僚が悪い」と言って済ますのはちょっと待ってください。実は、我々の暮らすこの日本社会は、格差の問題が叫ばれるこのご時勢でさえ、世界的に見てもきわめて貧富の差の小さい社会であり、その社会を戦後を通じて作ってきたのは主に日本の官僚たちなのです。
また、官僚制度を客観的に評価するときに使われる効率性、公平性、廉潔性(私欲がなく、行いが正しい)という三つの指標を日本の官僚制度に当てはめると、いずれも世界でトップクラスの高い評価です。実際、日本よりほかの国々の官僚や政治家のほうが、ずっと汚職などの腐敗の度合いははなはだしいのです。
つまり、日本の官僚たちは決して悪くない、いや、世界的に見ても優れているはずなのに、その努力が正当に認められていないという、非常に不条理な状態に追いやられているのです。これはいったいどういう訳なのでしょうか。
スケープゴートにされた官僚たち
そこには、グローバル化にともなうアメリカ的な価値観の急速な日本社会への流入という問題が横たわっています。アメリカは日本とは多くの点で異質な社会です。違う社会の価値観が無条件によいものとして信じられたとき、例えば官僚制度のようなそれまでの伝統的な価値観は無価値なものとしてさげすみの対象となります。
しかし、在来の官僚制度にも良いところはたくさんあります。アメリカの制度や価値観をただ鵜呑みにするのではなく、自分たちの文化の良いところをきちんと認識し、その上で社会の仕組みを主体的に考えていくべきでしょう。
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一橋大学 法学部 法律学科 教授 王 雲海 先生
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