「プレイスタイル」を自由に変える「ゲームAI」が登場するかも

「プレイスタイル」を自由に変える「ゲームAI」が登場するかも

半世紀以上前に始まった「ゲームAI」の研究

「AI(人工知能)」という研究分野が生まれた1950年代から、ゲームやパズルは重要な研究テーマでした。ゲームは、ルールが明確で勝ち負けによって強さの評価ができますし、簡単なものから複雑なものまで多種多様のゲームがあるので、AIの技術をテストする題材としてはうってつけで、強いゲームAIを作ることは優れた知能システムを作ることにつながるのです。

名人に勝つコンピュータ、そして神の一手へ

局面の有利不利を判断する評価関数とゲーム木探索技術の進歩の結果として、1997年に人間の名人に勝つチェスAIが完成し、現在は、将棋AIもプロ棋士と肩を並べるところまで来ています。また、囲碁AIにおいても、モンテカルロ法を用いた新しいアプローチが成功して注目を集めています。これは簡単に言うと、サイコロを振って、出た目に応じて手を選んでいく試行を膨大な回数行うと、そのうちに、どの手が勝ちやすいかがわかるというものです。この手法によって、囲碁AIの実力は急速に進歩して、今やアマ高段者レベルになっていますが、頂点を極め、さらにその先の「神の一手」をめざすには足りないことがまだたくさんあります。その一つが、組合せゲーム理論を用いた局面の数理的解析の研究です。これは、問題を小さな部分に分解して考え、それぞれの答をうまく足し合わせて、全体の答を出す理論です。これにより、局面のスコアを厳密に計算して、プロ棋士でも解けないような問題も解けるようになるのです。

人間に合わせてくれるゲームAIも登場するかも

ゲームAIの研究の目標は、強いプログラムを作ることだけではありません。人間がゲームを覚えて強くなっていく過程のさまざまな場面で、コンピュータが適切な指導をしたり、わからないところを解説したり、人間とコンピュータが共存するための技術の開発をめざしています。研究がさらに進めば、対戦相手のレベルに合わせて自動的に強さを加減してくれるような、人間っぽいゲームAIも登場することでしょう。

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先生情報 / 大学情報

九州工業大学 情報工学部 知能情報工学科 准教授 中村 貞吾 先生

九州工業大学 情報工学部 知能情報工学科 准教授 中村 貞吾 先生

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ゲーム情報学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は、学生時代に人間が話す言葉を理解する自然言語処理の研究を始めましたが、小さい頃から囲碁が大好きだったことから、いつかは思考ゲームの研究をやってみたいと思っていて、現在はその念願がかなってゲームAIを専門的に研究しています。研究は、地道な試行錯誤の繰り返しですが、自分が好きなことだからこそ、あきらめずに頑張れるのだと思います。大好きなこと、興味のあることが、きっとあなたにもあると思います。進路を決める際は、自分が本当にやりたいことは何なのかを、もう一度よく考えてみてください。

先生への質問

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「情報工学」は、高度情報化社会の進展の中で、ますます必須知識・技術となっています。
九州工業大学情報工学部は1986年に創設された日本初、現在も国立大学で唯一の情報工学部です。知能情報工学科、情報・通信工学科、知的システム工学科、物理情報工学科、生命化学情報工学科の5学科があり、それぞれの分野において、高度な専門技術を身につけた人材を養成します。これまでに1万人を超える情報通信技術者を生みだし、様々な分野で日本の情報通信革命を支えています。