意思決定の科学—行動データから考える、人間の選択の不思議
最良の選択をできるとは限らない
ノートパソコンを買う時は、価格、性能、大きさ、重さ、端子などのさまざまな情報を比較して商品を選択します。すべての情報を考慮すれば、最良の選択ができると考えられます。実際には、その時々の状況によって、まったく同じ選択肢でも評価や結果が変わることがあり、最良の選択ができないことがあります。例えば、「台数限定」と大きく書かれたポップにつられてしまい、予算を上回るものを選択することがあります。他にも、きれいなデザインにばかり注目してしまい、性能をほとんど考慮せずに、機種を選択することもあります。
どうやって選択する?
行動意思決定論などの行動科学では、人の選択を左右する要因や、選択を説明するモデルが研究されています。シミュレーションや行動実験のデータに基づく分析から、さまざまな要因が人の選択にどのように影響するのかを検討します。選択の際には、見るものの内容や、見る順番の影響を受けることがあります。そのため選択肢を置く場所をランダムにしたり、眼球運動測定装置を使って、実験参加者が見ていた場所・時間・順番を測定したりします。こういった研究は、人そのものに対する理解を深めます。また得られた知見はマーケティングや消費者保護にも活かされます。
最悪の選択を避けるには
「最悪の選択をしないこと」に着目した研究もあります。その研究では、実験参加者に、最良の選択をするはずの決め方でノートパソコンを選択してもらいました。選択データの分析から、最良の選択をしようと努力することで、むしろ良くない選択をする可能性が示されました。多くの選択肢や情報を検討しようとすることが、最良の選択を阻害すると考えられます。この結果は、自分にとって何が重要であるかをあらかじめ明確にすること、その重要なポイントに基づいて選択することが、最悪の選択の回避につながることを示唆します。最悪の選択を避けるという観点は、災害などの緊急の選択で役に立つことが期待されます。
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