ミクロのガラス生物「珪藻」に迫る
珪藻とは?
「珪藻(けいそう)」を知っていますか? バスマットや住宅の壁に使われる、「珪藻土」なら聞いたことがあるかもしれません。珪藻とは藻(も)の一種です。多様な形や性質を持ち、海や川といった水のある場所なら大抵生息しています。10万種以上いるとも言われていますが、人の目では見えないほど小さく、電子顕微鏡でしか確認できません。この単細胞生物の特徴は、なんといっても体の周りの細胞壁がガラスでできていることです。さらにそのガラスには、ナノメートル単位の極小の穴が、ずらりと規則正しくあいています。呼吸や栄養の取り込みなどのためです。これと同じような構造のガラス細工を人間が作ろうとすると、温度や圧力をかけながら数日かかるといわれます。しかし珪藻は、水中で数十分という時間で仕上げてしまいます。この驚異的ともいえる仕組みを解明し、ナノテクノロジーに応用できないかと、専門家から熱い視線が注がれています。
自然界でも人間界でも大活躍
自分で光合成をし、栄養を作ることができる珪藻は、海で生きる生物の食物連鎖の一番下の土台という重要な位置にいます。そんな彼らの誕生は2億5千年前と、生物の歴史としては比較的最近ですが、今や地球の酸素の5分の1を作り出しています。我々が5回呼吸するうちの1回は、珪藻が生み出した酸素を吸いこんでいる計算になるわけです。自然界で大活躍の珪藻は、ナノテクノロジーの進化や、ガラス質の死骸が堆積してできた珪藻土、また少し時代をさかのぼって、ダイナマイトの発明にも重要な役割を果たしました。珪藻は地球上の生物を支え、人間の生活にも大変役立っているのです。
謎の多い珪藻の解明へ
いろいろな場面で影響力のある珪藻ですが、まだまだ未知の部分が多く残されています。最近ではゲノム解析によって、珪藻の内側の姿がおぼろげながら見えてきています。最先端テクノロジーを活用することで研究の進展が期待されています。
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福井県立大学 海洋生物資源学部 海洋生物資源学科 教授 佐藤 晋也 先生
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