「協調安全」で人・環境と共存できるアシストロボットの開発

「協調安全」で人・環境と共存できるアシストロボットの開発

ロボットの作業性能と安全性

これまで、工場など限られた環境で働いていたロボットや自動運転機器も、これからは介護・福祉の現場などで、人と共に働くことが求められています。そのときに大切なのは安全性です。人の命や健康に害を与えないようにする性能も両立しなければなりません。
工場でモノを運ぶロボットであれば、人が近くに来たら止まるなどの制御で済みますが、自動運転の電動車いすでは、周りにぶつからないだけでなく、車いすを使う人がけがをしないような安全性能も必要です。

使う人の身体能力に合わせた制御

人を移動させるロボットでは、使う人の身体能力に合わせて適切な対策が取れないと、転倒などのリスクが生まれます。
例えば、車いすで坂道を下るときは、体が前に傾きます。腕や上半身を使って自分で体を支えられない人は、車いすから落ちてしまいます。それができない人が使うことも考えて、自動で座面の角度を変えて安全を守る機能が開発されています。

人、ロボット、環境の相互作用

人と共存するロボットの安全性は、人、ロボット、環境と、3つの相互作用で決まります。「協調安全」と言い、その3つがお互いに連携して安全を確保するという考え方です。まずリスクとなる要素を洗い出し、その状態を数値として表す方法を考えます。その数値を計算してどんなリスクが起こりやすいかを推定し、それをロボットや環境、人に対してフィードバックするのです。
現在、一人でも安全に歩行器を使ったリハビリができる、デジタルツインの「サイバーフィジカル歩行リハビリシステム」の開発が進行中です。そこでは、ロボットの状態、部屋の様子などと共に、人の体にセンサを付けて、筋力や疲れ具合まで測ります。疲れがたまると転倒しやすいからです。それらのデータを仮想空間で計算して予測し、歩行器を止める、ストレスを和らげる音楽を流す、アラームを出すなどの制御をします。
こうしたシステムが実用化されれば、介護福祉の大きな担い手になると期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

大阪電気通信大学 工学部 電子機械工学科 教授 鄭 聖熹 先生

大阪電気通信大学工学部 電子機械工学科 教授鄭 聖熹 先生

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ロボット工学

メッセージ

特に工学系は、人に役立つものをつくるための学びであり、それが魅力です。介護現場の人と意見交換しながら、自分の工学的知識を使って問題をクリアし、障害者や高齢者をアシストできるロボットの研究開発は、とてもやりがいがあり楽しい世界です。私の研究室では、電動車いすなど障害者支援の技術を競う国際大会「サイバスロン」にも参加しています。中学・高校で学ぶ数学や物理の知識だけでもできることがたくさんあるので、興味があるなら、ぜひ一緒にチャレンジしてください。

大阪電気通信大学に関心を持ったあなたは

本学は工学を中心に建築、情報、医療技術、リハビリ、スポーツ、ゲーム、デザインなどの学科/専攻を設置している「技術系総合大学」です。在籍学生数は大学院を含めて約5,887人(2023年5月1日現在)。高度なモノづくりができる「実践型教育」理念のもと、社会で実際に役立つ技術と知識修得をめざします。「3D造形先端加工センター」などの最先端設備や「資格学習支援センター」によるサポート体制が就職率の良さに繋がっています。また、2つのキャンパスは京都や兵庫近辺からのアクセスの良さも魅力の一つです。