筋肉が動くメカニズムを分子レベルで考える

筋肉が動くメカニズムを分子レベルで考える

筋肉の動きを力学的にとらえる

筋肉はいかにして動くのでしょうか。筋肉の収縮の様子を肉眼で観察して、正確に記述しても、それは現象にすぎません。現象の裏で働いているメカニズムを知るには、まず筋肉の何が動いているのかを考える必要があります。筋肉も細胞でできているので、細胞を単位として考えることになります。また、なぜ動くのかという疑問に対しては、車でいえばエンジンのような駆動部とガソリンのようなエネルギーを想定する必要があります。
実際、筋肉は上に挙げた要素で動いています。筋肉が収縮する時、筋肉細胞の中にある二つのタンパク質の滑り合う動きが引き起こされます。このエンジンの働きをもつのが、ミオシンやアクチンと呼ばれるタンパク質です。ガソリンは、アデノシン三リン酸(ATP)という物質が担当しています。そうした筋肉の動きは、エンジンであるミオシンやアクチンがATPをエネルギーとして使いながら、滑り合うことで起こると説明ができます。このように考えれば、筋肉の動きを力学的に説明することが可能になります。細胞を構成する分子の動きやATPのエネルギーを数値化することで、筋肉の動きを物理的な世界として描くことができる可能性があります。

可能性を広げるコンピュータでのシミュレーション

このような筋肉の分子メカニズムは仮説ではありません。実際に電子顕微鏡で観ることができます。それだけでなく、デジタル情報として数値化できることから、電子顕微鏡の画像をコンピュータを使って3D画像に変換することも可能です。立体画像はコンピュータのソフトウェアによって実現できます。さらに、その中に筋肉の動きのメカニズムが組み込むことで、バーチャルに筋肉を動かすこともできるようになるでしょう。実際に筋肉を動かさなくても、人間にとって可能な筋肉の動きを、分子という微細なレベルでシミュレーションできるわけです。これによって、目でみる観察や実験に加えて、目に見えない小さな世界で起きている多くの真実を知ることができるようになります。

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九州工業大学 情報工学部 物理情報工学科 教授 安永 卓生 先生

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生命情報工学は新しい分野なだけに、将来の進路を心配する人もいるかもしれません。しかし、最先端の内容が多く将来性が期待されるため、最近では、企業も注目するようになってきました。また、学習する内容は、従来の分野にとどまることなく、多方面につながっています。ソフトウェア開発の学習は情報系の企業や金融関係、測定機器などの機械メーカーと、生物や遺伝子などに関する研究は食品メーカー、医療関係など、将来進める道は多岐にわたっています。いろいろな可能性の中から自分の将来を選択できる学問です。

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「情報工学」は、高度情報化社会の進展の中で、ますます必須知識・ 技術となっています。九州工業大学情報工学部は1986年 に創設された日本初、現在も国立大学法人で唯一の情報工学部で、2016年に創設30周年を迎えました。知能情報工学科、電子情報工学科、システム創成情報工学科、機械情報工学科、生命情報工学科の5学科があり、情報工学の学びを軸としつつ、各学科の応用分野に対する教育研究を進めています。特に、教育システムは、全学科がJABEEに認定され、世界的に通用するものであることが保証されています。